今回は、法人化のメリットとデメリットについてお話しします。
僕が法人化をしたのは、2018年8月です。個人事業主として独立したのが2017年7月ですから、約1年で法人化したことになります。これは主に社会保険料の節約のために判断したことですが、法人化して3年ほど経ち、法人化の“面倒な”点が見えてきました。
税務手続きが増える
法人化のデメリットとして挙げられるのは、まずは税務手続きが増えること。個人事業主の場合は、所得税の確定申告書を税務署に提出すれば、その情報を元に住民税や事業税も確定しますよね。税務署に提出した情報が、地方自治体に引き継がれていくので、手続きは一度で終わります。ところが法人の場合、そうはいきません。
法人市民税、法人事業税、償却資産税が発生
法人市民税や法人事業税、償却資産税は、それぞれ申告書を作成して、それぞれの窓口に提出しなければいけません。税務署に法人税の確定申告をするのと合わせて、三つの窓口で手続きをしなければいけないのです。たとえ税務署の手続きがきちんと終わっていても、他の税務申告をしていなければ、追徴税の対象になります。
法人用の申告書は複雑
しかも、法人用の申告書は複雑です。僕は元税務職員ですが、手書きで作れと言われても作れないでしょう……。
個人の確定申告書は、書式の「第一表」から順番に埋めていけば、最終的な税額が出てきます。しかし、法人税の場合は細かいルールがあって、事業の状況によって申告書の様式や記入欄が異なり、非常に複雑です。
僕は今のところ、「全力法人税」という有料ソフトを使って自分で申告をしているのですが、今後は税理士さんにお願いする可能性もありそうです。
「freee」が法人税の申告書作成に対応
ちなみに、クラウド会計ソフトで知られる「freee」が、法人税の申告書作成にも対応するようになりました。年24800円ということで、税理士さんにお願いするより安いです。帳簿作成をfreeeで完結させている人は、そのままfreeeで法人税申告まで行ければ便利だと思います。
個人と法人の口座を分けて管理する手間
次に僕が感じている手間は、経理が複雑になることです。
会社のカードで個人用の買い物をしてしまうと精算が必要
法人化すると、個人と法人の口座をきっちり分けないといけません。だから改めて法人名義で銀行口座を開いたり、クレジットカードの審査を受けたりする必要があります。そして口座やカードの作成だけでなく、管理する手間も増えます。明細の取得や通帳の記帳の手間が、個人口座に加えて法人のものも増えるわけですから、手間が増えることになります。
間違えて会社のカードでプライベートのものを買ってしまったりすると、それを貸付金や立替金として処理して、定期的に精算しなければいけないといった手間もあります。
お金を自由に使うことができない
個人事業主の場合は、口座に残っているお金は基本的に自由に使えます。ですが、法人化するとそうはいきません。
法人の場合は、役員報酬以上の金額を受け取ること、つまり報酬以上の金額を口座から引き出せないのです。そして、会社から僕に支払う役員報酬は、基本的に年度の途中で変更できません。
役員報酬を決めるのは簡単ではない
役員報酬を多くし過ぎてしまうと、個人の所得税や住民税が増えてしまいます。また、保育料などの助成金が減ってしまう可能性もあります。社長個人の生活を豊かにするためには役員報酬を上げる必要がありますが、影響が色々と生じてしまいます。
社会保険の手続きも増える
次に僕が面倒だと思っているのは、社会保険の手続きです。法人化すると社会保険に加入することになりますが、最初の加入手続きだけでなく、毎年必要な手続きもあります。
「標準報酬月額」を毎年見直す
個人事業主の場合は、国民健康保険料や国民年金といった社会保険料は、手続き不要で、届いた通知に書かれている金額を支払えばよいだけです。しかし法人化すると、年に一度、社会保険料の金額を算出する元となる「標準報酬月額」を見直す「定時決定」の手続きが必要になります。
社会保険料を自分で計算しないといけない
さらに、保険料は自分で計算しないといけません。
社会保険料の率は毎年4月に変わることが多く、標準報酬月額は毎年9月に見直されます。これらの変動要素を加味しながら、会社から役員報酬を払うときに、天引きする社会保険料を計算しなくてはいけません。
社会保険料の手続きはツールが必須
僕の場合、社会保険の手続きには「人事労務freee」というクラウド会計ソフトの有料プランを使っていて、保険料の計算はある程度自動でできます。少しでも手間を省くために、手計算だけで全部やろうとせず、こういったツールを使うことをお勧めします。
法人化のメリット
ここまで、法人化によって僕が感じているデメリットの部分をお伝えしてきました。もしかしたら、法人化は手間が増えるばかりで、面倒でしかないと思われた方もいるかもしれません。しかし、もちろんメリットもあります。
社会保険料の節約
僕にとって一番大きなメリットは、社会保険料の節約です。
個人事業主は国民健康保険に加入していますが、これは家族の人数に合わせて保険料が増えていくので、5人家族の僕にとっては結構負担でした。
さらに、夫婦二人分の国民年金の支払いもあったので、この両方の合計で毎月10万円くらい支払っていました。しかし法人化した今、毎月の社会保険料は合わせて約6万円まで削減できています。
法人しかもらえない発注もある
これは業界によると思いますが、フリーライター業界では、法人でないと注出来ないというクライアントもいます。受注できる案件が増える可能性ができたことも、僕にとっては法人化のメリットのひとつです。
その時々の状況や制度次第で、法人か個人事業主か有利な方を選ぶ
ということで今回はフリーランスの法人化について説明をしました。
僕の場合は、今のところメリットの方が上回るので法人化しているのですが、状況が変わったら、また個人事業主に戻るかもしれません。
ご自身の状況や制度によって、法人化した方がよいタイミングは異なりますし、たとえ一度法人化したとしても、個人事業主に戻った方がよいということもあります。
その時々でメリットとデメリットを比較して、有利な方を選ぶのがよいのですが、その際に、このブログやYouTubeで発信している情報が少しでも参考になれば幸いです。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
【参考リンク】
年金事務所に直接行って社会保険加入したら、4万円くらい得した話
フリーランスが法人化するときに考えるべきこと『社会保険編①』