こんにちはよしこばです。
今回は、「年収106万円の壁」について説明します。
これまでにお伝えしてきた98万円、103万円の壁は税金の話でした。今回は健康保険や年金といった社会保険の扶養に関わる話です。
社会保険に加入するメリット・デメリットを理解し、今後の働き方の参考にしていただければと思います。
こちらの内容はYouTube動画でも説明していますので、よろしければあわせてご覧ください。
<本記事中の言葉の定義について>
本人:収入を増やそうとしている人
扶養者:本人を扶養している人
正社員以外も社会保険への加入が必須に
106万円の壁は、2016年10月の社会保険制度の改正によって出てきました。
それ以前は、パート等で働いている人は、正社員が加入している勤務先の社会保険、つまり健康保険や厚生年金に加入することができませんでした。そのため、扶養に入るか自分で社会保険に加入する必要があったのです。
それが2016年10月の改正を受けて、次の条件を満たす方は勤務先の社会保険に入ることになりました。条件を満たすと、社会保険の加入義務が生じます。
- 週の労働時間が20時間以上
- 1年以上働く見込みがある
- 賃金月額が8万8千円以上
賃金月額8万8千円を年収に直すと105万6千円ですから、およそ106万円になります。これが106万円の壁と言われる理由です。
ちなみに、106万円の壁に関係するのは、会社などで働く人です。会社に勤めていないフリーランスの場合、106万円の壁は関係ありません。次回の記事で解説する「130万円の壁」が社会保険のボーダーラインになります。
現在は500人超の会社のみが対象
こうして2016年10月から社会保険の加入対象が広がったわけですが、すべての会社に対して適用されてはいません。まずは、企業規模500人超の会社に適用されることになりました。
つまり、現時点では、企業規模501人以上の会社に勤めていて、先ほどお伝えした労働時間、勤務年数、月額賃金の条件をクリアした人が、勤務先の社会保険に入るルールになっています。
例外として500人以下の会社であっても、労働組合との話し合いによって、社会保険に入れるという仕組みもありますが、そうした会社は少ないでしょう。
2022年から小規模な会社も対象に
2020年に行われた年金法の改正によって、現状の企業規模の基準である500人が、段階的に引き下げられることが決まりました。
具体的には2022年10月からは100人、2024年10月から50人というラインに変わります。
だから、今のお勤め先が500人以下で、社会保険の加入義務がなくても、100人を超えていれば2022年から、50人を超えていれば2024年から、働き方によっては社会保険に強制加入することになります。
また、従来は「継続して働く予定の期間が1年」という条件がありましたが、改正によって2か月に短縮されます。つまり、長く働く予定のない人でも、社会保険に加入する可能性が出てきたということです。
社会保険に加入するメリットは?
このように働き方によって社会保険の加入するかどうかが変わるわけですが、そもそも「加入するのはいいことなのか」ということを検証していきましょう。
まずメリットから説明します。これは一言で言えば、「受けられる社会保障が手厚くなる」ということです。たとえば年金です。
下の表は、年収106万円の場合、社会保険料アップに対して、将来の年金がどれくらい増えるのかをシミュレーションしたものです。
増えるのは老齢年金だけではありません。障害を負ったときの障害年金や、死亡したときの遺族年金も増えます。さらに、出産一時金や、病気やケガをした時の傷病手当金がもらえる点もメリットです。
社会保険加入はデメリットもある
次にデメリットについて。こちらはひと言で言うと、「手取りが減ってしまう」ということです。
年収130万円未満であれば、基本的には社会保険の扶養に入れる範囲です。たとえば夫が会社員で、妻が扶養に入っていれば、妻本人の社会保険料を払う必要はありません。それでいて、将来の年金もきちんともらえます。
ところが、「106万円の壁」に引っかかり、本人が社会保険に加入するとなると、自動的に社会保険の扶養から外れます。そして、自ら健康保険料や厚生年金保険料を払うことになります。
こうして増える保険料は、先ほどの厚労省のシミュレーションによると、月額8万8千万円を稼いだとして、毎月の保険料が12,500円、年間で15万円にもなります。
手取り収入を増やすには、106万円を超えない働き方も一案
だから手取り収入を増やしたいのであれば、勤務先の規模にもよりますが、106万円の壁を超えない範囲で仕事をするというも、一つの考え方だと思います。
扶養に入って社会保険料を節約すると、将来もらえる年金はその分少なくなりますが、当面の家計は安定するでしょう。もちろん、ご本人がどれくらい働きたいかという点がもっとも重要ですが、社会保険の影響も踏まえて考えてみてください。
50人以下の企業の方も、130万円の壁に要注意
勤め先の規模が50人以下の方やフリーランスの方は、今のところ106万円の壁を気にする必要はありません。
ただし、年収130万円を超えると、もはや社会保険の扶養に入ることはできません。この場合、必ず自分で社会保険に入らなければいけません。
この点については、次回130万円の壁の記事で説明しますので、引き続きお読み頂ければと思います。
このブログでは、主にフリーランスの方に向けて、仕事関係やお金関係、税金だけでなく、社会保険や老後資金なども幅広く情報を発信していきます。よろしければ「本ブログの更新通知を受け取る」に登録いただけると嬉しいです。
※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
【参考リンク】
・「扶養判定」のルールがややこしい理由と、理解するためのポイント
・【収入の壁】給料103万円は「所得税」がかかるボーダーライン