こんにちはよしこばです。
前回説明した98万円の壁は住民税が発生するボーダーラインでしたが、今回説明する「103万円の壁」は所得税に関係する話です。
従来、この103万円の壁は、税金の扶養に関する話として認知されていたのですが、制度が変わりました。現在は扶養の判断には関係なくなりましたので、その点ついても説明していきます。
こちらの内容はYouTube動画でも説明していますので、よろしければあわせてご覧ください。
言葉の定義:「本人」と「扶養者」
今回の説明を始めるにあたって、この記事で使う言葉の定義についてお伝えします。
これから収入を増やして、103万円の壁を超えて稼いでいこうという人を「本人」とします。そしてその「本人」を扶養している人を、「扶養者」と表記しますので、ご承知おきください。
このテーマの一回目の記事でもお伝えしましたが、収入の壁について理解するには、誰の話をしているのかを把握しておくことが重要です。
「本人」の話なのか「扶養者」の話なのかを気にしながら、記事を読み進めてください。
給料をもらっている方の所得税
今回の話は、「給料をもらっている方」と「給料以外の所得を稼いでいる方」とでルールが違います。まずは、お給料の方の計算方法について説明します。
お給料の人は、「年収103万円」が規準
所得税は、所得金額そのものにかかるのではありません。所得金額から、所得控除を引いた金額に対して発生するのです。
所得控除にはいろいろありますが、給料をもらっている方が必ず控除されるものが2種類あります。一つが給与所得控除の55万円(※)、もうひとつが基礎控除の48万円です。
※給与所得控除の額は収入によって変わりますが、最低55万円は認められています。
給料をもらっている方は、所得金額からこの2つの控除の合計103万円が必ず引かれます。そのため、給料の収入が103万円以内であれば、絶対に所得税は発生しません。
これが103万円の壁の金額の根拠です。
では、年収が103万円を超えて、例えば105万円の場合で計算してみましょう。105万円-(55万円+48万円)=2万円です。所得税は、この2万円に税率を掛けて計算します。
社会保険料控除や医療費控除などがあれば、ボーダーラインが上がる
所得控除として、社会保険料控除や医療費控除などのように、一定のケースで使えるものがあります。たとえば本人が社会保険料や生命保険料を払っていたり、医療費控除を使ったりする場合、それらの控除が103万円に追加されていきます。
例えば社会保険料控除が3万円あったとしたら、給与所得控除55万円+基礎控除48万円+社会保険料3万円=106万円までは所得税はかかりません。
このように所得控除の額は人によって違います。ですので、所得税がかかるかどうかは個別に計算をして頂く必要があります。
まずは、「給与収入で年収103万円以下であれば、絶対に所得税がかからない」ということを覚えておいて頂ければと思います。
フリーランスのボーダーラインは所得48万円
次にフリーランスの方です。
フリーランスの場合は給与所得控除がありません。そのため、売上から必要経費を引いた所得が、基礎控除の48万円を超えると所得税が発生することになります。
青色申告で最大65万円控除できる
なお、青色申告の方は基礎控除の48万円に加えて、青色申告特別控除で最大65万円(※)を引くことができます。この場合、売上から必要経費を引いた所得が48万円+65万円=113万円以下であれば、所得税がかかりません。
(※)青色申告特別控除の額は状況に応じて、65万円、55万円、10万円の3段階のいずれか。
社会保険料控除や医療費控除等も使える
また、給料をもらっている方と同様にフリーランスの方も、社会保険料控除や医療費控除等を使うことができます。
フリーランスの方も、やはり所得控除の額はそれぞれ違ってくるので、ご自身の所得控除の額を計算しておいた方がよいでしょう。
所得税がかからない壁は103万円、48万円、113万円の3つを覚えておく
ここまでお伝えしたように、壁となる金額の数字はそれぞれの状況によって違ってきます。これがちょっとややこしいところです。主なケースとして、次の3パターンを押さえておくと良いでしょう。
- 給料をもらっている方:年収103万円
- フリーランスなど(白色申告):所得48万円
- フリーランスなど(青色申告):113万円です。
103万円を超えると扶養に影響したのは過去の話
次に扶養の話です。記事の最初で触れたように、この103万円の壁は、もともとは扶養に関する話として理解されていました。
その理由は、本人の年収が103万円を超えると、扶養者の税金が上がっていく仕組みがあったからです。しかし今は制度が変わって、103万円というラインは扶養には影響しなくなりました。
扶養者の税金が増えるボーダーは、現在は150万円
実際には影響はないのですが、扶養についても説明しておきます。
まず一口に扶養と言っても、税金の扶養と社会保険の扶養の2種類があります。
103万円の壁は税金の扶養の話です。本人の収入が103万円を超えると、扶養者が使っている配偶者控除が配偶者特別控除に変わります。
配偶者控除の額は一定ですが、配偶者特別控除は本人の所得が増えれば増えるほど、控除額が下がっていくという違いがあります。
以前は103万円から控除額が下がり始めたのですが、現在は150万円からになっています。このため、今は103万円の壁では扶養について考える必要がないのです。
フリーランスの場合は95万円を超えると扶養者の税金が増える
ただ、もし本人がパートやバイト等の給料をもらう仕事ではなくて、フリーランスで仕事を始めたという場合は給与所得控除が適用されません。そのため、150万円ではなくて95万円がボーダーラインになります
この辺りの話は、今後150万円の壁の記事で説明します。
ひとまず今回の103万円の壁は、扶養には影響しない、ということだけ覚えて下さい。
103万円は、98万円超の住民税に加えて所得税がかかる
前回説明した98万円の壁は住民税で、103万円の壁は所得税の話でした。給料の収入が98万円を超えると住民税が出てきて、103万円を超えるとさらに所得税が乗ってくるというイメージです。
そして次の壁は何かというと106万円の壁です。これは社会保険の扶養に関わるもので、また違う話になります。次回、詳しく説明していきますので、是非引き続きお読み頂ければと思います。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
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