お金関係の制度や法律は、難しくてよくわからないという方が多いと思います。でも、知っているか否かで大きな差がでますよね。そこで今回は、2022年をスタートする上でとくにフリーランスとしてチェックしておきたいトピックを4つ紹介します。
こちらの内容はYouTube動画でも説明していますので、よろしければあわせてご覧ください。
コロナ関連の支援
まず一つ目がコロナ関連の支援金です。残念ながら感染者数がまた増えてきていますね。僕の業界にも影響が出てきています…。どんな業界であれ、コロナの影響は読めません。事業継続のために、支援制度に引き続き注目しておきましょう。
事業復活支援金
以前の記事でも紹介しましたが、昨年11月に「事業復活支援金」というものが新たに発表されました。具体的な申請はこれからですが、対象者や支援金の上限は公開されています。
対象は昨年11月から今年3月までの5か月間、いずれかの月の売上高が30%以上減少した事業者です。売上の補填という位置づけですね。
支援金の上限額は状況に応じて異なります。売上の減少幅が50%以上かそれ未満か。また法人か個人か。さらに法人のなかでも年間売上高によって上限が設定されています。最大額は法人で250万円、個人事業主は50万円です。
一般的なフリーランスであれば、年間売上高1億円以下がほとんどだと思います。法人であれば100万円、個人事業主は50万円が上限だと考えておけばよいでしょう。
この申請手続きなどの詳細はあらためて記事や動画にする予定ですが、ひとまずは以下のリンクをご確認ください。
帳簿作成と税務申告が重要
事業復活支援金の申請にあたっては、帳簿作成と税務申告が非常に重要です。これまでの支援金もそうでしたし、今後出てくる制度も基本的に同様でしょう。
なぜなら帳簿を正しくつけていて、それにもとづいて税務署に確定申告なり法人税の申告をしていないと、売上が減ったという証明ができないからです。
サラリーマンであれば、収入が減ったことは源泉徴収票とか給与明細を見せれば済みますよね。でも我々フリーランスは自分自身で売上などを記録して、それを示さなければいけません。
たとえ実際にコロナの影響で売上が減っていても、帳簿をつけていないとか、税務申告をしていないと支援を受けられないのです。
このように、帳簿作成と税務申告は納税以外でも重要ですので、もし今きちんとできていないという方はすぐにはじめましょう。僕はクラウド会計ソフトのfreeeを使っています。
電子帳簿保存法
ふたつめは電子帳簿保存法です。はじめて聞く、という方もいらっしゃるかもしれませんね。ざっくり說明すると、これまで紙で保存していた領収書とか請求書を電子データで保存してくださいという法律です。
今年1月から開始。2年の猶予期間あり
実はこの法律は今年1月から施行されています。とくに大手ではすでに対応している企業もあると思いますが、準備が間に合わない中小企業のために2年の猶予期間が設けられました。本格運用は2024年からになりましたが、新しいやり方に慣れるには時間もかかりますから、今からはじめておくことをお勧めします。
紙ではなくデータで保存。後から探せるように整理しておく
電子帳簿保存法への具体的な対応は別の記事にまとめたいと思いますが、まず意識するべきは「とにかくデータを取っておく」ということです。
たとえば取引先から請求書をメールでもらったり、逆に送ったりすることがあると思います。そうしたメールや添付した請求書のファイルをデータで保存しておくのです。これを捨ててしまうと、たとえプリントアウトしていても経費などが認められない可能性があります。
データ保存のポイントは後から探せるようにしておくこと。フォルダやファイル名を工夫してデータ保存を進めていきましょう。
インボイス制度
3つ目は2023年10月に始まるインボイス制度です。ここでは簡単に説明しますので、詳細は以前の記事を参照ください。
年間売上高が1,000万円未満のフリーランスは免税事業者です。取引先から消費税分の支払いを受けたとしても、それを納税する必要はありません。現状ではその10%分を売上に加算して受け取っていると思います。
ですがこの制度が始まると、それを受け取れなくなる可能性があるのです。また取引先が免税事業者への発注を避けるようになって、受注が減ってしまうこともあるかもしれません。
インボイスの影響は未知数ですが、ネガティブなことであることは覚えておいたほうがいいです。フリーランスの売上や利益が減る方向の話ですから、本格的な改正が行われる前に備えておきましょう。
税制改正大綱でフリーランス保護について示唆
一方、インボイス制度についてポジティブな情報もあります。令和4年度税制改正大綱に気になる記述がありました。これは昨年12月に政府与党が発表したもので、その中にインボイス制度に関するところがあったので、以下抜粋します。
制度移行にともなって免税事業者である小規模事業者が不当な取扱いを受けないよう、免税事業者等との取引に関する独占禁止法、下請法、建設業法における取扱い等を明確化して周知するとともに、それらの法令に基づいて相談窓口での対応や、下請Gメンや書面調査による状況把握を通じて適切に対処する。
ここでいう「免税事業者である小規模事業者」とは、我々フリーランスのことです。つまり、フリーランスがインボイス制度に関して不当な取り扱いを受けないように、法整備が行われることが読み取れます。
たとえば、インボイス制度の開始後、取引先から「消費税を請求しないでください」とか「取引金額を下げてください」といった要求があった場合、法律で守られる可能性があります。具体的な法整備はこれからですが、今後もチェックした方がいいでしょう。
フリーランス保護
最後の4つ目ですね。先ほどの話とも重なりますが、政府としてフリーランスを保護する方向で法整備が進んでいくことになっています。
昨年3月に「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が出ました。これは内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で発表されたものです。
それを読むと、フリーランスに対して多様な働き方の拡大、高齢者雇用や社会保障の支え手の増加などへの貢献を期待されていることがわかります。そこでフリーランスが安心して働ける環境のために、政府として一体的に保護ルールの整備を行うという方向性です。
ガイドラインの内容
では、ガイドラインの概要を見てみましょう。
まずフリーランスの定義は「実店舗がなく雇い人もいない自営業者や一人社長であって、自身の経験や知識スキルを活用して収入を得る者」とあります。僕のようなライターもそうですが、フリーランスの方全般に当てはまるのではないでしょうか。
次の「独禁法、下請法、労働関係法令との適用関係」には、これらの法律を適用する要件が書かれています。とくに事業者とフリーランスの間の力関係に差があるようなケースでは、基本的にフリーランスが保護される内容になっているようです。
具体的に保護されるケースとして、次のような例が挙げられています。
- 報酬の支払い遅れ
- 報酬の減額
- 著しく低い報酬の一方的な決定
- やり直しの要請
- 一方的な発注の取り消し
こういったことって、フリーランスとしてはとても心配なことですよね。取引先である事業者の立場が上になることも多く、不当な要求をされても、承諾せざるを得ない力関係が働くこともあるでしょう。
そのような状況を避けるため、政府は法整備を進めようとしています。こういうガイドラインが出てきているのは、とてもありがたいことですよね。
このガイドラインを知っていると、困ったことがあったら公正取引委員会などの窓口に相談できたりしますよね。概要は1ページにまとまっていますし、ぜひ参照していただければと思います。欄外にリンクを貼っておきますね。
フリーランスを続けるためにお金の知識をつける
ということで、2022年をスタートするにあたり、お金に関してチェックしておきたいポイントを4つに絞ってお伝えしました。
フリーランス保護の話にもありましたが、フリーランスという働き方はこれからの社会を考える上で大切だと思っています。
ただやっぱりお金が問題になっている面は否めないですよね。僕自身も何とかここまで5年間フリーランスを続けてきてそう思います。
だからこそ、フリーランスの方が少しでもお金に関する知識をもつことで事業を長く継続できるよう、お役に立てる情報発信を続けていこうと、2022年になり気持ちを新たにしました。
このブログでは、主にフリーランスの方に向けて、仕事関係やお金関係、税金だけでなく、社会保険や老後資金なども幅広く情報を発信していきます。よろしければ「本ブログの更新通知を受け取る」に登録いただけると嬉しいです。
※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
[参考リンク]
・「インボイス制度が始まるとフリーランスの仕事がなくなる」って本当?
・令和4年に変わる税制。フリーランスにどう影響する? 【令和4年度税制改正大綱】
・【事業復活支援金の給付要件】フリーランスが今やるべき売上の記録
・フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(概要)(経済産業省ホームページ)