2022年7月で、国税局から独立して6年目を迎えました。独立前に想像できなかったような幸運もあれば、ピンチもたくさん経験しました。今回は、そんな独立後の5年間を振り返りたいと思います。
YouTubeでもお話ししています。
公務員を退職した日のこと
東京国税局を辞めたのは、2017年7月10日のことでした。あの日はとてもよく晴れていたことを覚えています。
7月10日は国税局の人事異動のタイミングで、職員は異動辞令をもらう日です。だから僕は、僕も異動する人たちと同じように所長室の前に並び、辞令を受け取りました。ただ、その辞令には当然ながら異動先の記載はなく、退職を認めると書かれていました。
そうして僕は荷物をまとめ、庁舎を後にします。部屋を出る時に拍手で送り出していただきました。それでもなかなか自分が退職するという実感はわきません。まるで他の税務署に異動するような感覚がありました。
でも、庁舎を出て駅に向かう途中の道で、「僕が向かうべき部署はない」と思いました。せっかくだからどこかに寄り道しても良かったのですが、僕はまっすぐ自宅に向かうことにしました。
そうして乗った電車は、驚くほど空いていました。それまでは毎日朝夕の混んだ通勤電車に乗っていたので、まるで別世界のような感じです。「平日の昼間ってこんな感じなのか」と、少しずつ自分が退職したことを自覚しました。
もう、引き返せないところに来てしまったのだ、と。
独立1年目のピンチ
公務員からフリーライターになった1年目にピンチが訪れました。でも、そのことが次につながるきっかけになりました。
先の仕事は未定だったが、1件目の受注を獲得
僕が国税局を退職した時点では、先の仕事や収入のあてはほぼありませんでした。副業が禁止されていたので、独立前にライターの実績を積むことはできず。かなり不安定な状態での独立だったと思います。
ただ幸いなことに、退職翌日に参加したイベントをきっかけに、最初の仕事をいただきました。独立前に通っていたライター塾の友人が教えてくれたイベントです。そのイベントはメディア運営をしている企業が主催していました。
イベントの懇親会で「昨日国税局を退職してライターになった」と伝えたら、仕事をいただいたのです。これが1件目の受注になりました。さらに、僕の友人がサプライズでお祝いのケーキを用意してくれていて、とても嬉しかったです。
初年度の売上は月25万円程度
その後の売上の状況を、会計ソフトから出してきたリアルな数字で紹介します。
1件目の受注で7月に5万円の売上を得て、8月以降は25万円ぐらい稼げています。これは僕の知人が心配して仕事を紹介してくれたおかげです。12月には大きめの案件があり45万円ほどの収入でした。
こうして数字を見ると、未経験からフリーライターになったことを考えると、悪くないスタートだったと思います。でも専業主婦の妻と息子2人を養うには、十分とはいえない金額です。やはり、退職金を取り崩しながら生活をせざるを得ませんでした。
妻の入院で取材に行かれず収入が途絶える
本格的にライターの仕事を増やそうとしていたところに、妻の入院という事態が起こりました。2017年の年末だったと思います。当時妻は3人目の子どもを妊娠していました。月1回の妊婦検診の際の数値が悪く、入院が必要と診断されてしまったのです。
原因は妊娠高血圧症といって、妊婦さんにはよくあるという症状。医師によると、5日程の入院ですむとの話でした。ところが5日経っても血圧が下がらず、結局入院は2か月にもおよびました。また生まれた第三子も低体重児で、さらに1か月、看護が必要になりました。
妻や子どもが入院している間、僕は小学生だった2人の息子の世話をしなければなりませんでした。妻の着替えを持って病院にいく必要もあり、食事や学校の準備など、やらなければいけないことが一気に増えたのです。
あの頃の稼ぎの中心は、取材して記事にする仕事でした。実際に現地に赴いてインタビューをする仕事は結構ニーズがあり、少しずつ仕事量を増やしていくつもりでした。でも、もう取材に行くことはほぼできません。そうして収入がぱっと途絶えたのです。
公務員時代のような有給休暇や傷病手当金などもありません。貯金が減っていくことを考え、この先どうなるだろうと、とても不安でした。
退職金と保険金でしのぐも、この先が不安
妻が入院した頃は退職金が残っていたので、すぐに生活に困るわけではありませんでした。また、幸いにも妻の医療保険で約30万円を受け取れました。この保険は、たまたま独立する直前に加入したものです。
知り合いの方から、「フリーランスになるなら保険を見直したほうがいい」と言われて加入していたのが正解でした。日額5,000円ぐらいの少額のものですが、保険金のおかげで少し安心できました。
経験した方はわかると思いますが、お金があるだけでは不安は拭えません。お金が減っていくのは怖いものです。せめて現状維持したいけれど、仕事ができない。退職金と保険金でいくらか安心できましたが、やはり仕事への不安は常にありました。
独立2〜3年目の飛躍
1年目のピンチを乗り越え、2年目以降はいくつかのチャンスに恵まれました。独立をして自分で稼ぐ面白さを感じ始めたのもこの頃です。
元国税ライターとして活動開始
妻が入院していた2018年の年初に、「元国税として確定申告に関する記事を書いてほしい」という依頼がありました。
僕はそれまでインタビューライターとして、別の方が表に出る記事を書いていました。だから、元国税という肩書を前面に出してはいませんでした。だから、1年目には僕の署名記事というのはほとんど出ていません。
妻の入院中に依頼を受けた記事は、取材に行かずに書けるものだったので引き受けることにしました。僕の署名記事で、確定申告のポイントを解説しました。この記事が、なんと2日間アクセスランキングの1位になったのです。
これをきっかけに、僕のもとに「元国税ライター」としての仕事依頼が増えていきました。妻の退院後は、それまでやっていたインタビューライターもやりつつ、自分の名前の記事も書く。そんなふうに立場を使い分けてきました。
念願のブックライティング、自著がヒット
僕がライターになったのは、実はブックライティングが目的でした。人の本を作るお手伝いがしたかったのです。その仕事もできて、さらには自分の本を書く機会にも恵まれました。1冊目は河出書房新社さんの『確定申告 得なのはどっち?』という本です。
そこから約半年後、サンマーク出版から『すみません、金利って何ですか?』が出ました。この本が出た経緯も不思議なご縁でした。元々僕の本になる予定ではなかったのですが、紆余曲折あって依頼をいただくことになったもの。それが出版した年に約10万部売れました。このことで人生が大きく変わったと思っています。
4〜5年目のサバイバル
自著がヒットして迎えた4年目。あのときはフリーランスの不安定さを学ぶことになりました。一つのヒットで一生安泰というわけにはいきませんね。
コロナで仕事が半減
2020年の春頃から、新型コロナウイルスの影響を受けました。収入の半分以上を占めていたインタビューライターの仕事が一気に途絶えたのです。著名人の方にインタビューをして記事や本にする仕事は延期となり、イベント取材記事は、イベント自体がなくなってしまいました。
あの頃、自著で得た印税収入は新居への引越などに使ってしまっていました。このままコロナが長引くと厳しいと感じ、僕は公的な支援を調べます。そして、このブログでも紹介してきたコロナ関連の給付金や補助金、融資も受けました。できれば借金はしたくありませんでしたが、仕方がありません。
そうした対策をとったおかげで、なんとか資金繰りのピンチを乗り越えられました。また。支援制度への理解が深まりました。その経験をこのブログの記事やYou Tubeで紹介できたことも、よかったと思っています。
You Tube開始 ライティング以外の収入が入るように
2020年の秋頃にYouTubeを始めました。コロナで減った収入を少しでも埋めようと思ったのです。それが1年半が経った今年に入って、チャンネル登録者が1,000名を突破。時間はかかりましたが、おかげさまで収益化できました。
実は、YouTubeを始めるにあたっても、補助金の支援を受けています。カメラなど必要な機材は小規模事業者持続化補助金を活用して購入したものです。補助金のおかげでライティング以外のビジネスに目を向けることができ、収入を得られた。その意味で、5年目は今後に向けて大きな一歩になったと思っています。
これから。フリーランスが生き残るための知識・マインドをシェアしたい
では最後にこれからの話をさせてください。本はこの7月に1冊発売されて、この先も4冊出る予定があります。いずれもお金関係の本です。本以外でも、今はマネーライターの仕事が中心です。ただ、今後は他のこともいろいろやっていきたいと考えています。
フリーランスが生き残るのは簡単なことではありません。この5年間を振り返っても、そう思います。あの時に少しミスしていたら、続けていられなかっただろうと思うこともあるのです。一番大きいのはお金の問題ですが、メンタルや法律の知識が必要な場面もありました。
にもかかわらず、フリーランスの人が頼れるところは多くありません。だから、自分の知識や経験を、このブログやYouTubeで発信していきたいのです。他にも情報シェアできるコミュニティみたいなものを作るかもしれません。
最後になりますが、応援して下さるみなさんのおかげで、6年目を迎えました。これからもお役に立てるような情報を発信していきます。引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
【参考リンク】
・個人事業主から法人化してみて分かったメリットとデメリット
・【法人成り】個人事業から法人化するベストタイミングは?