今回は税務調査の話です。
税務調査は何となく怖いというイメージがありますよね。僕も今はフリーランスですから、突然税務調査が来ると思うと、やはり嫌です。
ただ、職員時代を振り返ると、素直に応じていれば、そこまで恐れる必要はないと思っています。ポイントは「嘘をつかない」ということですね。
税務調査と一言にしても、複数のタイプがあり、厳しさに違いがあります。今回の記事では、税務調査のタイプを、国税職員だった時のリアルな経験も含めてお伝えしていきます。
こちらの内容は動画でも説明していますので、よろしければあわせてご覧ください。
実地調査:納税者のところに行って話を聞く
税務調査の中で一般的なものは任意調査です。この任意調査にも、実地調査、反面調査、事後処理というものがありますので、順番に説明していきます。
まずは、実地調査です。これは、実際に納税者の方のところに行って、話を聞いて調査するというものです。同意を取って、事前に日時の約束をした上で話を聞くという流れで行われます。
無視すると予告なく調査に来る場合も
税務調査が行われるということは、何か申告の誤りが想定されているのです。税務署側として確認が必要なことがあるということなので、できるだけ早く対応しましょう。遅れると延滞税もかさむので、税負担を抑えるためにも早めの対応がベターです。
もし無視したりすると、予告なく調査が行われる場合もあります。僕も何回かやったことあるのですが、朝9時になった瞬間にチャイムを押して調査を始めるのです。
実地調査が行われるのは、会社やお店などが多いですが、フリーランスは自宅で仕事をしているので、いきなり自宅に調査官が来るということもあります。
慌てず冷静に話をすれば終わる
税務調査は怖いというイメージがありますが、基本的に怒鳴られたりすることはなく、淡々としたやり取りになります。フリーランスであれば、確定申告のための領収書などの資料を取っているはずですから、そうした資料を確認する時間がほとんどです。そのうえで、税務職員からの質問に答えていきます。
職員の態度については、担当者のパーソナリティにより多少の差はあるでしょう。もしかすると地方によっても差があるのかもしれません。もう10年以上前の話になりますが、全国の税務職員が集まる研修の時に聞いた話では、僕がいた東京よりも西日本の方が厳しい感じがしました。
いずれにしても調査に行くのは普通の公務員です。実地調査の話が来た時は慌てず、冷静に話をすれば終わるので、あまり過度に恐れる必要はありません。
反面調査:取引先などを調査する
反面調査は納税者本人ではなくて、その納税者と取引をした会社等の関係者に話を聞いて行われる調査です。これをやられるとちょっと嫌ですよね。
守秘義務があるので、余計なことは話さない
たとえば、不動産売買について、申告では2,000万円で売ったことになっているけれど、どうやら3,000万円らしいという情報が税務署にあった場合をイメージしてください。
まずは本人に話を聞きますが、それでもやっぱり疑わしいという時には、不動産会社とか仲介業者等の取引先に、取引の内容を聞くことがあります。これが反面調査です。
ただ、税務職員には守秘義務があるので、余計なことは話しません。例えば「あの人が売却額2,000万円で確定申告している」とか、ましてや「その人が脱税しているようです」などと言うことはありません。あくまでも調査に必要な情報を聞くだけです。
口裏を合わせると、ばれて重加算税がかかる
もしここで取引先と口裏を合わせて、3,000万円の取引を2,000万円だとしていても、税務署に3,000万円という情報は入っているのですから、脱税の疑いは消えません。そして大抵のケースでは口裏合わせがばれてしまって、重加算税が発生することになります。
事後処理:税務署に呼び出して話を聞く
任意調査の3つめは事後処理です。これは、明らかに申告間違いで実地調査をするまでもないだろう、という時に行うものです。納税者の方を税務署に呼んで書類を確認しながら、指導します。これも税務調査の一環なので、申告誤りについてペナルティが発生します。
僕がやっていた頃は、事後処理を行うと決めた2~3日の間、30分おきに予定を入れて、対象者の方に来て頂いていました。基本的には申告誤りを指摘する場になるので、文句を言われることも少なくなかったです。
たまに、予定の時間に来ない人もいるのですが、その場合は再度日時を設定することになります。相手が不誠実な場合は、実地調査に移ることもあります。来てもらえないなら、行くしかないということです。
嘘をつくと調査も厳しくなり、ペナルティも重くなる
ここまでお伝えしてきた任意調査は、基本的には穏やかに行われます。ただ納税者の方が嘘つくと、途端にちょっと態度が変わるようなことがあります。
税務職員は普段は市役所職員などと同じく、行政サービスを提供している側です。ところが嘘をつかれた場合、つまり法律違反をしているような方に対しては、警察のようなスタンスを取ることになります。
「重加算税」というペナルティの影響もあります。重加算税を判断する基準の中に、嘘をついているかどうか、というものがあるので、嘘をつく納税者は厳しく詰めることになるのです。
税務調査の場で嘘をつかれると、その人の話だけを聞いても事実を確認することができます。すると、反面調査で取引先や銀行を調べることになり、調査は長期化します。そうして延滞税がどんどん増えていくのです。
怒鳴る調査官、黙る調査官
税務調査で嘘が明らかになると、語気を強める調査官もいます。人によっては途中で休憩を挟んで一緒にタバコを吸いながら、そこで話してもらったケースもあるようです。
僕の場合、怒鳴るようなことはありませんでした。整合性の取れない話をされた場合は、「きちんと説明してください」とお願いするだけです。
そして、ひたすら沈黙です。話していただけるまで、時間かかっても構いません。そうするとその空気に耐えられなくなるのか、「実はこうでした」と話をして頂けました。
こちらから「あなたは嘘をついていますよね」と言ってしまうのは、新人がやりがちなミスです。相手にとっては「言わされた」ということになれば、後で問題になりかねません。あくまでも本人に説明してもらって、その結果嘘が発覚するのがあるべき形なのです。
査察調査: 強制的に調査する
最後に査察調査の話です。多額の脱税が見込まれるケースで行われる強制的な調査です。「捜索差押礼状」を取った上で強制的に会社や自宅に入って、机や金庫を調べたり、場合によっては書類を持ち帰ることもあります。
税務調査と言えば、ドラマなどで見かけるこの査察調査のイメージのある方も多いかもしれませんね。
査察調査は任意調査ではないので、いつどういう形で行われるかは分かりません。一般的な税務調査は土日には行いませんが、査察の場合は曜日も関係ないようです。
実は、僕自身、査察でどういう調査が行われているのか分からないのですが、少しだけ覚えていることがあります。
国税局の建物の中に査察部の階があり、当時福利厚生の仕事をしていて、万歩計を渡そうとしたところ、「中に入るな」と言われました。他の部署はすべて部屋の中に当然のように入れたのですが、査察だけは別だったんですね。
国税局員でも他部署の人は入れないくらい、情報管理が徹底されている、ということですから、それだけ機密度の高い案件を扱っているということなのでしょう。
税務調査の対象になってしまったら素直に応じる
ということで今回は税務調査についてお伝えしました。
税務調査で嘘をつくと調査も厳しくなり、その上時間がかかって納税が遅れて、ペナルティも重くなります。そもそも税務調査の対象にならないように、正確に申告することが必要です。ですが、それでも対象になってしまった場合には、素直に応じた方がよいということです。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
【参考リンク】
・税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け) (国税庁ホームページ)