こんにちはよしこばです。今回は、開業したらまず使いたい節税方法を5つ紹介します。
振り返ると2017年7月に独立したとき、僕が頼ることのできる唯一の知識が基本的な節税の知識でした。フリーランスには任意で使える節税方法がいろいろとあり、それらをきちんと取り入れて確定申告をすれば毎年数十万円単位の節税効果が見込まれます。
こちらの内容は動画でも説明していますので、よろしければあわせてご覧ください。
会社員とフリーランスの節税
まず、会社員とフリーランスの「節税」の違いを確認しておきましょう。
会社員には自動的に税金が抑えられる制度がある
会社員の方は、必要経費を一切使っていなくても、「給与所得控除」が収入金額から自動的に差し引かれます。年末調整をきちんとすれば、社会保険料控除、生命保険料控除、配偶者控除などの所得控除を受けることもできます。
一方、任意で使える節税方法が少ないことが会社員のデメリットです。いくらか方法が増えているとはいえ、誰にでもお勧めできるのは、ふるさと納税、iDeCo、NISAしかありません。
フリーランスは任意の節税制度を活用する
フリーランスには、会社員のように自動的に税金が抑えられるような仕組みはありませんが、確定申告の時に任意で使える節税制度が複数あります。
任意ですので、自ら手続きをしなければ、節税効果を受けることはできません。これは毎年続くと、家計に明らかに悪影響です。
今回の記事では、フリーランスが開業時から使える5つの節税策を紹介します。それほど難しいものではありませんので、ぜひ取り入れて、節税につなげて下さい。
青色申告: 年間の所得から最大65万円を差し引く
青色申告による節税メリットはいくつかあるのですが、代表的なものが青色申告特別控除です。
毎年見込まれる節税効果は10万円以上になることも
青色申告特別控除は、年間の所得から最大65万円を差し引けるという制度です。
例えば事業所得が200万円であれば、通常はその200万円に対して税金がかかります。しかし青色申告特別控除を使えば、課税される所得が、65万円を引いた135万円になります。税率を考えると、毎年10万円から20万円くらいの所得税や住民税が下がるはずです。
実際に支払っていないの引けるのがポイント
青色申告特別控除のポイントになるのは、実際に65万円を支払ったわけではないのに、所得から引くことができるということです。
「必要経費を増やせば税金が下がる」と言われることがありますが、これは実際に経費を支払っているので、必ずしも「得」ではありません。
でも青色申告特別控除の場合は、手元からお金がなくならずに節税効果も得られるので、損は何もなく、これは是非とも活用したい制度です。
青色申告を受けるには承認申請が必要
青色申告を受けるには、税務署に承認申請書を提出する必要があります。事業所得のある方であれば、提出すれば基本的には承認されます(後で取り消されるケースはあります……)。
開業から2か月以内に提出
申請の期限は、青色申告を適用する年の3月15日です。ただし、1月16日以降に開業した場合は、事業開始日から2か月以内に申請を行えば、その年度から適用されます。
例えば4月1日に事業を開始した場合は、5月末までに申請をすればよいのです。ただ、忘れてしまわないよう、できれば開業届けと一緒に提出しておきたいものです。
青色申告特別控除の額は65万円、55万円、10万円の3段階
青色申告特別控除の金額には段階があり、65万円というのは最大の金額です。控除額は状況に応じて、65万円、55万円、10万円の3段階のいずれかになります。
最大の65万円を使うための条件は、以下のとおりです。
- 期限内に確定申告をする
- 複式簿記で作った書面を確定申告書と一緒に提出する
- e-Taxで確定申告(または電子帳簿保存を利用)する
いくつか条件を満たさなければいけないので、面倒くさいと思われるかもしれません。しかし、一度やってしまえば、後は毎年同じことの繰り返しです。
青色事業専従者給与:家族に支払った給料全額を必要経費に
次に青色事業専従者給与です。長くて難しい言葉ですが、要は家族に支払った給料を全額必要経費にできるという制度です。
家族への給料は経費にもなるし、家計の一部にもなる
例えば毎月家族に10万円の給料を支払うとしましょう。もし青色事業専従者給与を活用すれば、これだけで年間120万円の経費を所得から差し引けるので、大きな節税効果があります。
さらにポイントになるのは、その給料は家族に支払っているわけですから、家計の一部になるということです。
家族ではない従業員に支払った給料は、経費にはできるけれども、そのお金は外に出ていってしまいます。一方、僕が妻に支払っていたように、家族に対して支払う給料は、必要経費にもなる上、家計の中に残って生活費にすることができるのです。
青色事業専従者給与も届出が必要
この制度を使うためには、青色申告の承認を受けて、さらに「青色事業専従者給与の届出書」を出す必要があります。この書面には、具体的にいくらの給料を支払うかを記載し、そのあとは届け出たとおりの給料を支払うことになります。
2.2.3 青色事業専従者給与の注意点
ただ、これにはいくつか注意点があります。
まずは、「専従者」という言葉のとおり、基本的には専業で自分の仕事を手伝ってくれている人しか、専従者として認められません。
僕の場合は、妻が専業主婦だったので問題ありませんでしたが、もし妻がフルタイムで仕事をしていたら事業専従者にはできていなかったと思います。
さらに、家族に支払う給料が必要経費にできるなら、金額を上げたいと思われるかもしれませんが、金額を高くしすぎてしまうと、受け取った家族に対して税金や社会保険料がかかってしまいます。
あくまでも仕事量との兼ね合いも考えながら、専従者に支払う給料金額は慎重に決める必要があるのです。
小規模企業共済:退職金としてお金を積み立てる
次に小規模企業共済です。これは以前詳しく解説したので、よろしければそちらの記事を参照下さい。以下、簡単にお伝えします。
お金を貯えながら節税できる
小規模企業共済は自分のための退職金として、お金を積み立てていく制度です。フリーランスには退職金はありませんし、サラリーマンの方に比べて年金も少ないので、老後に備える方法のひとつとして検討しておきたいものです。
小規模企業共済のポイントは、「お金を残しながら節税ができる」ということです。
必要経費としてどんどん支払っていたら、節税はできても、お金がなくなってしまいます。でも小規模企業共済なら、将来の退職金のためにお金を積み立てておくものなので、お金がなくなることはありません。
将来の受け取り時にも税金的に優遇される
さらに、将来受け取る時にも、一時金なら退職金扱い、分割払いなら年金扱いになるので、同じ金額を投資などで得た場合よりも税金が通常は低くなります。
年間最大84万円の所得控除ができる
小規模企業共済の掛金は、毎月1,000円から7万円までの範囲内で決めることができます。ですので、最大で年間84万円分の所得に対して、節税効果があるということになります。
もしマックスの金額を20年間積み立てたら、1,680万円分の所得控除の効果があるので、税額としては300万円程度の節税効果を見込めるでしょう。
申し込みは中小機構窓口や金融機関で行う
小規模企業共済を利用するには、中小機構の窓口や、銀行などの金融機関で手続きをする必要があります。基本的には申し込んでスタートする制度ですので、老後資金の準備という点でも、早めに検討することをお勧めします。
iDeCo:個人型確定拠出年金
4つめはiDeCo、正式名称でいうと個人型確定拠出年金です。
年間最大816,000円が全額所得控除に
これもやはり将来のために積み立てる制度です。先ほどの小規模企業共済と同じように、毎月の掛金が全額所得控除になります。
そして、自営業者の掛金の上限は月68,000円と、会社員の方が約2万円であるのに比べて、優遇されています。毎月、上限の68,000円を積み立てた場合、年間で816,000円が所得から控除される計算です。
iDeCoと小規模企業共済の違いは、リスクにあり
iDeCoと小規模企業共済の違いは、運用する商品を自分で選べるかどうかです。小規模企業共済の場合は、基本的に元本と利息が保証されているので安心です。
しかし、運用する商品を選ぶことはできず、リターンは大きくありません。1,000万円積み立てたものが、1,100万円くらいにはなるかもしれませんが、2倍、3倍になることはありません。
iDeCoは投資商品を選んで高いリターンを狙えるが、損が出る可能性もある
その点iDeCoは、自分で投資する商品を決めることができるので、成長する銘柄を選ぶことができれば、もしかしたら2倍、3倍に増えるかもしれません。
ただ逆に、運用損が出る可能性もあるので、気をつける必要があります。手堅く行くのであれば小規模企業共済、ある程度投資に詳しくて、運用商品のリスクを見極められる方であれば、iDeCoを検討してみてはいかがでしょうか。
税別で請求:消費税の仕組みを使って、収入を増やす
最後に紹介するのが、「消費税10%分」を自分の収入にするための工夫です。
ここまでの話は税金を少なくするための方法でしたが、これは消費税の仕組みを使って、収入を増やす方法です。
課税事業者なら、消費税を納める必要あり
取引の際に受け取った消費税は、本来税務署に納付しなければいけません。例えば、20,000円の報酬に加えて10%、2,000円の消費税が支払われた時には、その2,000円は税務署に納める必要があります。
課税事業者は、前々年の売り上げが1千万円を超えた人
消費税の課税事業者かどうかの判断基準はいくつかありますが、基本的には、前々年の1年間の売上が1,000万円を超えたかどうかです。1,000万円を超えていなければ、免税事業者となるので、消費税を納める必要はありません。
報酬額を税別にすると、支払われた消費税分が収入になる
では、この制度を、収入を増やすためにどう活かすのか。
これはシンプルな話で、取引先と報酬の交渉をするときに、報酬額を税別にしてもらってその額の後ろに(税別)と記入してもらうことです。
例えば報酬が20,000円だった場合。税込みか税別かを明確にしていなければ、20,000円が振り込まれるかもしれません。しかし、(税別)と記載があれば、報酬の20,000円に加えて10%の消費税分も合わせた22,000円が支払われます。
もし自分が免税事業者であれば、その消費税分の2,000円は納める必要がないので、手元にとっておくことができるのです。簡単に言えば収入を10%増やせるということになるので、積もり積もると大きな額になりますよね。
税別にしてください、という相談は途中からはしづらいので、最初の取引の時に報酬は税別であると確認しておくことをお勧めします。
5つの制度を活用して節税だけでなく収入増にもつなげる
ということで今回は、開業したらすぐに活用したい節税方法5選を紹介しました。
青色申告特別控除、青色事業専従者給与、小規模企業共済、iDeCo、そして税別で請求するという話でした。
フリーランスが活用できる節税にはさまざまのものがありますので、ぜひ上手く活用して、節税だけでなく、収入の増加にもつなげて頂けたらと思います。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
【参考リンク】
・小規模事業共済記事(独立した人だけが使える「小規模企業共済」の4つのメリット)
https://yoshi-koba.com/small-business-mutual-aid-merit
・所得税の青色申告承認申請手続(国税庁サイト)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
・青色事業専従者給与に関する届出手続(国税庁サイト)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm
・小規模企業共済(中小機構サイト)
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/