今回は法人口座の開設がテーマです。そもそも法人名義の口座は必要なのか? どのように選ぶのか? 審査の際に必要な注意点など、僕の経験もふまえてお伝えしていきます。
法人名義口座を作る理由とポイント
法人口座とは、文字通り法人名義で開設した金融機関の口座のことです。
個人事業主が法人化すると、最初は個人名義の口座を使うしかありません。法人名義の口座を作れるのは会社の設立登記の後で、審査の時間もかかるからです。
ただ、そのまま個人名義の口座を使うのはおすすめしません。法人口座を持っていた方が、入出金の管理がしやすく、帳簿作成のときに混乱せずに済みます。また、税務署から会社と自分のお金を混同していると疑われる可能性も低くなるでしょう。
法人名口座の開設には厳密な審査がある
個人名義の口座は必要な書類を提出すれば審査なしで作れますよね。でも会社名義の場合そうはいきません。振り込め詐欺などで法人を装った口座が使われることなどの理由から、審査が厳しくなっています。
審査にかかる期間はそれぞれです。ホームページを見ると、たとえばGMOあおぞらネット銀行は最短即日。一方、住信SBIネット銀行だと目安は2週間。これらは最短の目安で、書類不備による再提出の可能性もありますから、余裕を持って申請しましょう。
資金管理のため複数口座を持つ
法人口座を作る時に、口座を複数持つことをおすすめします。実際、僕は楽天銀行で次の4つの口座を開設しています。
- 売上入金用
- 経費支払用
- 税金等積立用
- 利益積立用
4つも口座を作るのは、資金管理がしやすいからです。それぞれの口座の明細をみれば、入出金の流れが一目瞭然。たとえば売上の動きを見たければ、売上用の口座を見るだけで把握できます。
複数口座を持つとお金が貯まりやすくなる
『PROFIT FIRST お金を増やす技術』という本によると、口座を複数に分けて運用するだけで貯蓄しやすくなるといいます。
どういうことか簡単にお伝えします。通常、売上から経費を引いて残った額が利益だと考えますよね。そして利益の一部で納税をするというのが普通の考えです。
でも本書では、売上から利益や税金を引いて、残ったお金を経費の予算と考えています。ただ、1つの口座だけで管理していると、このような予算づくりが難しくなります。
そこで、複数の口座を使って管理するのです。僕の場合、売上の入金があったら、まず利益と税金分をそれぞれの口座に移します。そして残った分を経費口座に入れ、それを予算にしています。
こうすると、使えるお金の中でやりくりしようという意識が強くなりますよね。結果、お金が貯まりやすくなるのです。家計の管理でも、給料をもらったら先に貯蓄した方が、お金が貯まりやすいのと同じイメージです。
法人口座はネット銀行がおすすめ
ここから、法人口座を開設する金融機関を選ぶ時のポイントをお伝えしていきます。僕はネット銀行をおすすめしています。それはなんといっても手数料の安さが理由です。
手数料を比較
同じ銀行でも、個人と法人では手数料の金額が異なります。さらに月額基本料が別途必要になる場合もあるのです。
三菱UFJ銀行でオンラインバンクを使うと、月額基本料が1,728円かかります。決して安くない金額ですが、僕は会計freeeというソフトを使っていて、オンラインバンクは必須です。
しかも、振込手数料も個人名義の口座よりも高く設定されています。他行宛で3万円以上の振込だと、660円も取られてしまいます。これが何年も積み重なると、結構な金額になりますよね。
一方、ネット銀行では月額基本料はかかりません。毎月無料で口座を利用できます。しかも振込手数料も同じ銀行内ならゼロ円というところもあります。つまりメガバンクではなくネット銀行にするだけで、節約ができるわけですね。
取引先の信用のためにメガバンクとの併用もあり
手数料だけで見れば安いネット銀行一択ですが、メガバンクとネット銀行の併用がおすすめです。なぜなら、ネット銀行だと取引先の信用が得られないおそれがあるから。
さすがに信用のためだけにオンラインバンクの月額基本料を払うのはもったいないのですが、メガバンクの口座を持ち、オンラインバンクを使わないという選択はありだと思います。
ちなみに僕はネット銀行のサブ口座として、月額基本料のないゆうちょ銀行でも口座を作りました。
ネット銀行一本にするときの注意点
ネットバンクでは、社会保険の口座振替ができません。メガバンクや信用金庫では口座振替ができるので、ネットバンクはこの点では不利です。
ただこれも、Pay-easy(ペイジー)が使えるネットバンクを選べば、それほど困らないと思います。楽天銀行はペイジーに対応していて、ネットからいつでも社会保険料などを納められます。このような細かい違いも事前に確認した方がいいでしょう。
同一名義で複数口座を作れる銀行が便利
先ほど、法人名義の口座は複数持っていた方がいいとお伝えしました。ただ銀行によっては、同一名義で複数口座を持てないところもあります。
僕が楽天銀行を選んだのは、これができることも大きな理由でした。「口座管理プラス」というサービスを利用すると、複数口座を同一のIDで利用ができ、これも大きなメリットです。
僕が法人化した2018年の夏は、このようなサービスは珍しいものでした。でもいまはGMOあおぞらネット銀行やPaypay銀行でも同様のサービスがあります。
なおPaypay銀行は楽天のように最初から複数口座を申し込むことができません。法人口座が開設できてから追加申請するのです。しかもその際にも審査があって、開設できない可能性もあるそうです。同じようなサービスでも、こういった条件が異なることがあるので注意してください。
法人口座開設の審査をクリアするには
法人口座を開設しようという時に調べていると、「審査落ちした」という話も聞きますよね。ここからは僕が審査に通るために気を付けたことを説明していきます。
一番重要なのは事業実態の説明
これが最も重要だろうと思うのは、「事業の実態」が確認できることです。審査の目的は犯罪につながる可能性のある架空の会社との取引を避けるため。だから自分の会社が何をしているのかをわかりやすく説明できることが重要なのです。
たとえば楽天銀行では、次のいずれかの提出を求めています。他行も似たような感じですね。
- ホームページアドレス
- 許認可・登録・届出(受理されたもの)
- 発注書、納品書、請求書(自社宛てのもの)
- 各種契約書
- その他取扱い商品確認資料
事業実態の確認できる書類として、僕は個人事業主時代の支払明細の写しを提出しました。その際、信用度が高くみえるものを選びました。たとえば大手出版社からのものや、継続的な取引のもの、比較的高額の書類です。
あとは、このブログのURLも申込書に記入しました。会社概要なども入ったホームページは用意できなかったので苦肉の策です。ただ、ライターとして仕事をしてきたことを示すものにはなるものでした。
提出が必要なのは「いずれか1点」です。でも出せるものがあれば提出してもいいのではないでしょうか。審査の面談がない金融機関は、基本的にこの資料だけで判断します。いきなり法人設立した場合は難しいと思いますが、僕のように個人事業の頃の書面を出すことは、有効です。
資本金は100万円あった方がいい?
今は資本金1円でも会社設立ができます。ただ、法人名義の口座を開設するなら、少なくとも100万円はあった方がいいと思います。金融機関側からすると、あまり資本金が低いと信用しにくいところがあるようです。
ただし、資本金が100万円以上あっても審査に落ちてしまうこともあるようです。必要十分条件ではないことも知っておきましょう。
固定電話なしで申込み可能な銀行もある
かつてはほとんどの金融機関で、法人口座の開設には固定電話が必要でした。最近は固定電話なしでOKのメガバンクもあります。固定電話が必要かどうか、事前にホームページなどで確認しておきましょう。
申込書や提出書類は抜け漏れなく
最後に、当たり前のことですが、申込書類は間違いのないように書く。そして必要な書類はすべて揃える。これが大切です。郵送で提出する場合、記入漏れなどがあるとやり取りに時間がかかってしまいます。
その他に意識したことは、できるだけ詳細に記入することでした。電話番号は、他ではいつも携帯電話のみですが、念のため、固定電話もあわせて記入しておきました。審査をスムーズに通すためにも、このあたりには細心の注意を払いました。
確認の電話がくることがある
僕が楽天銀行で口座開設の申請をした数日後、楽天銀行から電話がありました。
確認点は2つで、「事業内容」と「複数口座を申し込んだ理由」を聞かれたのです。少しドキドキしましたが、ありのままを伝えて無事に審査に通りました。
事業内容は個人事業主のライターとして受けてきた仕事や、今後考えているビジネスについて。複数口座の理由は、それぞれ売上入金用・経費支払用・税金準備用・利益積立用だと説明しました。
審査に通るか否か、明確な基準は明らかにされていません。でも実際に経験して感じたのは、「事業の実態の説明」が重要というものでした。
それを考えると、独立する時にいきなり会社にしない方がいいのかもしれません。僕は会社を作る前に個人事業主として仕事していたから、請求書の提出ができました。ブログのURLもそうです。もし最初から法人化していたら、提出できるものはありませんでした。
事業実態が証明できる取引があるかどうか。これは法人化のタイミングを検討する際のポイントのひとつになるかもしれませんね。
まとめ。法人口座は自分の使い方に合わせて選ぶ
今回は法人口座の選び方と審査のポイントをお伝えしました。各金融機関のサービス内容は変わっていきます。ご自身の使い方に合わせてメリットとデメリットを比較することが大切です。その際に今回の記事が参考になればと思います。
このブログでは、主にフリーランスの方に向けて、仕事関係やお金関係、税金だけでなく、社会保険や老後資金なども幅広く情報を発信しています。
よろしければ「本ブログの更新通知を受け取る」に登録いただけると嬉しいです。
※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。