今回は、「補助金にはリスクがある」という話をします。返済義務のない補助金なのに、なぜリスクがあるのか。僕が初めて申請した補助金「小規模事業者持続化補助金」(以下「持続化補助金」)について、実感したことをお伝えしたいと思います。
こちらの内容は動画でも説明していますので、よろしければあわせてご覧ください。
持続化補助金のしくみ
持続化補助金の基本的なしくみを解説したいと思います。
受給対象事業者は業種と従業員数で決まる
持続化補助金を受ける資格があるのは、小規模事業者です。この判定は、業種と常時使用している従業員の人数によって行われます。
僕のようなフリーライターであれば、商業・サービス業に位置づけられるので、常時使用する従業員の数が5人以下であれば、対象ということですね。
対象事業は「地道な販路開拓」と「業務効率化」
そして、この補助金の対象となる事業は、「地道な販路開拓」あるいは「業務効率化」のための事業と決まっています。詳細は公募要領の「3.補助対象事業」をご確認いただければと思いますが、いくつかご紹介します。
まず、「地道な販路開拓」に該当するケースを一部抜粋します。
- 新たな販促用チラシの作成、送付
- 新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告、ウェブサイトでの広告)
- ネット販売システムの構築
- 国内外の展示会
- 見本市への出展
- 商談会への参加
次に、「業務効率化」のカテゴリを見てみましょう。
- ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導、助言
- 店舗改装
このように、対象となる費用はかなり幅広く認められています。簡単に言ってしまえば、お客さんを増やしたり、業務を効率化したりする際にかかる費用が、補助金の対象になるということですね。
僕の場合、ライターの業務に加えて、動画を使ったコンテンツ販売を考えているので、その計画で申請を出しました。このブログの記事にリンクを貼っているYouTubeもその一環で、動画撮影のためのカメラや照明器具などについて、補助金を申請しました。
募集は年に4回ある
そして、この持続化補助金の募集期間は、原則として1年に4回設けられています。ですので、直近の募集期間までに書類を準備できなかったとしても3~4ヶ月くらい待てば、次の申請にチャレンジすることができます。
補助金について、税金を気にする必要はない
ちなみに、補助金は税金の対象になる、という記事がたまに出ていたりするのですが、税金のことは気にする必要はないかなと思います。
補助金で受け取った金額は、収入として計上する必要がありますが、補助金は支払った経費のうち、一部が戻ってくるというものです。例えば100万円の費用を払って、そのうち補助金として50万円もらったとしましょう。すると、収入50万円として計上する必要がありますが、経費は100万円ですから、トータルすると50万円のマイナスとなり、結果、税金が増えることにはならないのです。
補助金は返済不要。融資は返済が必要な借金。
事業者向けの支援制度は、大きく分けて補助金と融資に分かれます。補助金の最大のメリットは、返済しなくてもよいという点です。
例えば、僕が申請した持続化補助金については、約100万円までの補助が認められましたが、もし100万円をもらっていても返済の必要はないということです。
一方、融資の場合は100万円を借りたら、それに利息をつけて返さなければなりません。事業者支援として行われる融資制度は、普通の銀行で借りるよりも金利が低かったり、担保がいらなかったり、返済期限が長かったりといった有利な条件となっています。こちらも利用する価値のあるものですが、「融資を受けた金銭はいずれ返さなくてはいけない」ということは覚えておいて下さい。
注意点1 申請書を作るのは大変
これだけ聞くと、補助金のほうが有利と思われるかもしれませんが、実は色々とデメリットもあります。ここからは僕が実感した補助金のデメリットについて、順番に解説していきます。
まず、補助金の申請書の作成に手間がかかります。融資の場合は、借りたい金額を報告して帳簿などを提出すれば、そのまま通ることも多いと思いますが、補助金の場合は計画書が必要になります。その補助金のルールに沿った計画があるのかどうかを、審査されることになるので、それを文章で表現しなければいけません。
申請書ダウンロードページに掲載されている、いくつかの業種の記入例を参照頂ければ、なんとなく大変そうだということは想像できるかと思います。
僕はもともとも公務員で、今はライターなので、そういう書類を作るのは苦手ではないですが、結構時間がかかってしまったという方もいらっしゃるようです。
事前に費用の見積り計算が必要
また、どのくらいの費用が見込まれるかを、事前に計算する必要もあります。まだ計画書ですから、実際にいくらかかるか分からないのですが、見込まれる費用を集計して報告しなければいけません。
そして、後日支給される補助金の額は、申請した見込み額を元に算出されます。ですので、申請した額が50万円であれば、実際にかかった費用が60万円だったとしても、補助金の決定額は50万円を元に計算されるので、事前にしっかりと見積もっておくことが大切です。
注意点2 支払日より補助金の支給日は遅い
補助金は、申請した計画の通りに費用をいったん全部支払って、計画の実施報告を行った後に支給されることになっています。
僕の場合は、費用を支払ってから補助金の受け取りまで、1年くらい間が空いてしまいました。2020年5月に申請に通り、そこから動画制作に必要なカメラなどを買い揃え始めました。2021年1月に結果報告をして、その後、職員の方とのやりとりがあって、補助金の決定通知が来たのが2021年4月です。そして、振り込みは5月になりました。
先に支払う経費の資金準備が必要
経費の支払いから補助金がもらえるまで、僕の場合は1年でしたが、それ以上かかってしまう可能性もあると思います。だからこの辺の資金繰りが結構大事です。
例えば、150万円を支払って、100万円の補助金が受け取れるという申請が通っていたとしても、150万円はいったん払わないといけないわけですから、その150万円をどうやって用意するのか、ということを考えておかないといけないですよね。
手元に十分な資金があればよいのですが、そうでなければ融資も併用するなどして、資金繰りの対策が必要になってきます。
注意点3 申請に通った金額が、全額支給されるとは限らない
これが最大の注意点ですが、申請に通って、その申請どおりに費用を支払ったとしても、補助金が全額支給されるとは限りません。計画の実施状況であったり、そろっている書類の状況によって、最終的な支給額は改めて判定されることになるのです。
支給されないケース1 計画の実施が期間に間に合わない
補助金の申請が通った後に、「実施期間」というものが設けられていて、この期間内にお金を支払って実施した事業の分だけが、補助金の対象となります。
例えば、最近のスケジュールでは、申請書の締め切りが2021年2月5日、採択結果公表が2021年4月28日、補助事業の実施期間が2021年11月30日までとなっています。ですので、もし実施が2021年12月以降になってしまったものがあった場合には、その分の補助金は申請できず、減額されてしまうということです。
僕の場合、申請に通った補助金の額は約100万円でしたが、期間内に実施できなかったものがあり、実際に支給が決定された額は約30万円でした。当初の計画では、オンラインコンテンツ制作のための出張を予定しており、そのための交通費などを計上していました。ところが、コロナの影響もあって出張することができず、計画よりも費用が少なくなり、結果的に補助金も減額となったのです。
スケジュールが理由で申請を取り下げることも
他のフリーランスの方でも、海外に行くことが前提の事業で補助金を申請していたところ、コロナによって、その事業を行うことができなくなってしまったため、補助金の申請を取り下げた方がいらっしゃいました。
こうなると、せっかく時間と手間をかけて申請書を作ったのに、時間がもったいなかった、ということになってしまいます。きちんと現実的に実施できる計画を汲み、申請に通ったらすぐさま事業に取り組めるようにしておくのがポイントです。
至急されないケース2 書類が揃わない
補助金交付の審査は、申請時の計画段階と、計画実施後の報告の2段階で行われます。問題は、補助金交付決定を受けて計画どおりに実施したにもかかわらず、実施報告の審査ではねられるケースです。
補助金は、税金を使うものなのできちんと実施報告をすることが求められます。支給の決定は書類審査で行われますから、書類を揃えないといけません。だから、領収書とか口座から引き落とされている情報とか、実際に物を買って費用を支払った状況を示す書類がちゃんと揃わないと、実際にお金を払っていても、補助金がもらえなくなってしまいます。
僕の場合ヒヤヒヤしたのが、補助金の対象になっていたカメラの購入代金の振込明細書を、紛失してしまっていたことでした。なんとか領収書が見つかって、事なきを得たのですが、もしこの領収書が見つかっていなかったら、このカメラの経費は補助金の対象外となってしまい、それだけで補助金が10万円以上減額されていたはずです。
補助金を使って多くの物を買おうとすると、提出書類も増えるので、紛失などで書類が揃わないリスクが高くなっていくことにも注意が必要です。
支給されないケース3 対象外費用と認定される
これが一番問題を感じたところだったのですが、計画通りに物を買って、必要書類が揃っているにも関わらず、支給されない可能性もあるのです。その理由は、「対象かどうかの基準が曖昧」という点にあります。
計画を申請する際には、「機械装置費として計30万円」といった大まかな形で認定してもらえるので、カメラが15万円とか、照明が5万円などの内訳は必要ありません。ところが、実施報告をする時には、領収書などの詳細の書類を添付して報告することになります。事務局の人はそれを見て審査をするのですが、ここで「補助対象外」と判断されてしまう可能性があります。
僕の場合、撮影用に買った照明について、もしかすると対象外になるかもしれない、という連絡がありました。ところが、その理由が明確には説明されませんでしたし、よく分からなかったのです。最終的には認められたのですが、基準が明らかではないのでヒヤヒヤしました。
こういった問題は結構起きているようで、補助金の申請が通って、そのとおりに支出をしたのに、最終的に支給されなかった、というコメントをTwitter上でも見かけました。
審査する職員の判断次第で支給されない可能性もある
お金の話は、判断が曖昧なところが出てきてしまいがちです。OKかNGか、あらゆる事象を細かく文章にしたらものすごく膨大になるので、グレーゾーンができてしまうという事情もあると思います。
税金であれば法律や通達、判例などでいろいろと判断できるのですけれども、補助金はそういう細かい決まりを作るには至っていないのかなと思います。だからこそ状況よっては、審査する職員の判断次第というところがあるので、もらえると思っていたものがもらえない、というリスクがあるのは、結構怖いところだなと思いました。
補助金と融資を使い分けて、上手に資金繰りを行う
補助金は返済不要ですし、頂けることはとてもありがたいのですが、お伝えしたように、手間や時間がかかったり、最後の最後で支給されないというリスクもあります。
考えようによっては、審査がシンプルで、「返済しなければいけない」というリスクがはっきりしている融資のほうが、使いやすいということもあるかもしれません。
両者のメリット、デメリットをよく検討して、上手に資金繰りを行いたいですね。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。