先日Twitterで、あるライタースクールが廃業したことがで話題になっていました。独立のためのスクール選びはとても重要です。今回は、僕が公務員時代に通っていたスクールの実体験を踏まえ、スクール選びのポイントを4つ挙げます。
YouTubeでもお話ししています。
Twitterで話題。ライタースクールの廃業
ライター向けのスクールの廃業が話題になっていたのは、ある理由によります。そのスクールは、受講生に仕事を斡旋し、報酬を払う約束をしていたのです。
独立を目指す人や、ライターになりたての人にとって、仕事をもらえるのはありがたいはずです。高い受講費を払ったとしても、仕事の報酬で相殺できると考える人は少なくなかったでしょう。
ところが、そのスクールが突然廃業して、斡旋していた仕事は未払いに。すでに記事を書いていた受講生は、時間や労力が無駄になったのです。
この出来事を知って、あらためてスクール選びは重要だと感じました。限られた時間やお金のリソースを使うわけですから、慎重にスクールを見極める必要があります。
公務員時代に飛び込んだスクールの実体験
上阪徹氏のブックライター塾
僕が公務員を辞める3年ほど前、プロのライターである上阪徹さんのブックライター塾に通っていました。
この塾がライターになるきっかけを与えてくれたわけですが、それまでの経緯を説明させてください。
僕は新卒で東京国税局に採用されたのですが、30歳を目の前にして、「このままでいいのかな」という漠然とした不安がありました。それを解決したくて、ビジネススクールに通っていた時期があったのです。
そのビジネススクールは、自分のやりたいことを見つけることを大事にしていたのですが、僕はなかなか自分がやりたい仕事が思いつきません。
そんなある日、本屋で偶然手に取ったのが、上阪さんの著書である『職業、ブックライター。』だったのです。
この本はタイトル通り、書籍を専門にしているライターの仕事の紹介をしています。上阪さん自身がブックライターで、この職業の素晴らしさを伝えるような本でした。
これを読んで、この職業が自分に合っているような気がしました。なんとなくピンと来るものがあったのです。
勇気を出してコンタクトを取る
とはいえ、どうすればライターになれるかは全然わからない。そこで上阪さんに連絡を取ってみることにしました。今思えば大胆なことをしたと思いますが、Facebookで検索して、いきなりメッセージを送ったのです。
すると、ありがたいことにお返事をいただきました。そこで知ったのは、上阪さんがプロのライターを育てる講座を準備している、ということでした。
その説明会があるということで行ってみると、講談社の建物の中に数多くの人が集まっていました。そして、たくさんのファンが見守る中でお話をする上阪さんの姿を見て、ぜひ教わりたいと思ました。
その講座の受講料は公務員の給料からすると高額だったので躊躇しましたが、思い切って通うことにしました。あの決断は本当によかったと思っています。
人生が変わる体験
すでに書いたとおり、ブックライター塾では仕事の斡旋は行っていません。でも、結果的には、ここでのご縁から仕事をいただくこともありました。
2017年に未経験でライターとして独立をして、その年に書籍の仕事をいただきましたし、大手のメディアでも記事を書くことができました。
僕にとって最大のヒット作である、累計14万部の『すみません、金利ってなんですか』(サンマーク出版)が生まれたのも、ブックライター塾で知り合った編集者さんがきっかけでした。
この塾に通ったことで、本当に人生が変わったと思っています。
見分け方のポイント1 講師の実績
ここからは、僕の経験から考える、「良いスクールの見分け方」を紹介します。ポイントは4つあると思います。最初のポイントは、なりたい職業の本当のプロから教わるということです。
すごそうな肩書きに惑わされない
ライターになりたいのであれば、ライターとして活躍している人。プログラマーなら、プログラマーとして実績のある方。講師なのだからプロだろうと思わず、実績は必ず確認した方がいいでしょう。
今回破産したスクールの情報を見たら、講師の方は編集プロダクション在籍、執筆実績は合計3,000記事と書かれていました。
3,000記事と聞くと、ライターを目指す人にとっては「すごそうだな」と思うかもしれません。でも、ライター業界ではそのぐらい書いている人は大勢います。しかも、その方の名前で検索しても、執筆した記事や書籍は何も出てきませんでした。
大手メディアに記事が出ているか
ライターの世界では、名乗ろうと思えば、何も実績がなくてもプロだと名乗れます。独立して何十年も活躍しているのか、今日開業届を出したのかは判断できません。
したがって、独立をしたくてスクールに申し込むのであれば、その前に、講師の実績を調べてレベルを確認しておく必要があると思います。
ちなみに上阪さんのプロフィールページには、執筆した本が数多く出ています。その他、フォーブス ジャパンやダイヤモンド・オンラインなどで執筆した記事も挙がってきます。
他にライタースクールで有名なのは、宣伝会議が主催する編集・ライター養成講座です。僕の周りで通っていた人も多くて、こちらの講師も、上阪さんをはじめ、名だたる方々が登壇しています。
自分の理想像に近い人物かも重要
講師については、レベルだけではなく自分が憧れる人物かどうかも重要です。自分がありたい状態を実現している方に学ぶことで、そこに近づけると思います。
僕の例であれば、将来まずはライターとして生計を立てたいと思いました。さらにある程度経済的に豊かで、仕事も生活も充実していることが理想でした。『職業、ブックライター。』を読んで、上阪さんは僕が理想とする状況を実現していると感じていました。
また、講師のプロフィールを確認する際、可能であれば実績だけではなく、人物像もチェックするといいと思います。やはり人の相性というものはあるので、慎重に考えるべきです。
ポイント2 仕事の斡旋は期待しない
2つ目のポイントは、仕事の斡旋を期待しないこと。一見すると仕事の斡旋があるほうが嬉しいと思いますが、僕は逆の考えです。
破綻したスクールのスキームに見る構造的欠陥
破産したスクールは受講生に仕事を斡旋すると謳っていました。1本1万円ぐらいが目安で、月30本以上も可能だということでした。
しかし、これは成立しないだろうと、自分がライター業界にいて思います。
ネックになるのは案件の件数です。ライターの仕事は常に変動します。増えていく受講生に対して、安定的に月30本の案件を渡せるとは思えません。金額も、1本1,000円の仕事もあれば3~4万円ということもあり、バラツキが非常に大きいです。
受講生が少ない最初のうちは、案件のストックを使って何とか回せるかもしれません。ですが、そのスクールがよほどたくさん受注できる会社でなければ、継続するのは難しいと思います。
もうひとつの問題は、仕事を与える受講生の実力を担保できないという点です。納品レベルがばらついていたら、発注は増えていかないですよね。その点でも、やはりビジネスモデルとして成立しづらいと思いました。
下手な約束をしないスクールの方が信頼できる
上阪さんのブックライター塾は、仕事の斡旋はしないと最初から案内されていました。仕事を斡旋するといえば、当然受講生は多く集まるでしょう。でも、そういう集客をしないところも信頼できると感じました。
まず受講生として学んで、自分の実力をつける。その結果として、お仕事をいただけることはあります。ただしそれはあくまで結果としてのこと。最初から受注を当てにしない方がいいと思います。
ポイント3 大手企業が関係している
ポイントの3つ目が、大手企業の後ろ立てがあるかということ。必ずしもないといけないものではありませんが、信頼性が違ってきます。
主催や関連がどこかをチェック
主催団体が破産したら、どうしようもないですよね。特に受講料が高額の場合には、より慎重になった方がいい。
ブックライター塾は、講談社の編集者さんからの依頼があって始まったもの。『職業、ブックライター。』を講談社で出したということもあったようです。当時、説明会や講座が講談社の建物で行われていました。同社の協力があるという点でも安心感がありました。
今はオンラインだけの授業も当たり前になりました。だから、結構簡単に講座を開催することができます。その分、すぐになくなってしまう可能性も高いのかもしれません。
その意味でも、長年の実績があるスクールは安心です。上阪さんの塾は9期まで終わって、2022年11月15日に10期の日程が公開されました。宣伝会議さんは、40期を超えています。本当に長く続けているところは信頼できると言えるでしょう。
ポイント4 人とのつながりも得られる
最後の4つ目は、知識だけではなく人とのつながりを得られるかどうかということ。これも非常に大事です。
ブックライター塾で得た貴重なご縁
フリーランスになってみて、知識やスキルだけで稼げるわけではないと実感しています。特にライターの世界では、業界の中のつながりはものすごく大事です。
上阪さんのブックライター塾では、ゲスト講師として編集者の方が登壇します。ホームページでこれまでの講師一覧が公開されていますので見てみましょう。ダイヤモンド社、講談社、サンマーク出版、東洋経済新報社、朝日新聞出版などなど。一度は名前を聞いたことがあるような出版社も名を連ねています。
今はコロナの影響で開催されていないかもしれませんが、当時は講座後に懇親会がありました。それでゲスト講師の編集者さんたちと、つながりをもつことができたのです。卒業後も塾生限定の交流会があって、そこでもいろいろな編集者さんと出会えました。
つながりが独立後に生きてくる
僕が独立したのは、ブックライター塾に通ってから3年後。それでも、この塾でつながった方々から、独立後にお仕事をいただくことがありました。僕の自著は5冊ともブックライター塾で出会った方とのご縁がきっかけで発売できたものです。
今でもつながりのある編集者さんがたくさんいます。学んで終わりではなく、今後の可能性を広げてくれる。そういう講座に出会えて本当によかったなと思います。
まとめ。できるだけ多くの情報を集める
ということで、今回はスクールの選び方について、僕の経験を中心にお伝えしました。講師の実績など、スクール側の案内をそのまま信じるのではなく、他の情報を調べてみることが大事です。
もしできれば、卒業生の話も聞けるといいですよね。実際に通った人たちの間で、悪い話が出ていなければ安心できます。
独立を目指して通うような講座は、決して安い金額ではないケースが多いです。情報をしっかり集めた上で、その期待に対して見合った料金かで最終的に判断しましょう。
この記事が、キャリアチェンジのためにスクールや講座に通おうという方の参考になれば嬉しいです。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
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