今回は2022年1月から始まっている電子帳簿保存法がテーマです。2年間の猶予が設けられましたが、今から準備をはじめることをお勧めします。まずは最低限押さえておきたいポイントについて、手順を追って解説していきます。
こちらの内容はYouTube動画でも説明しています。よろしければあわせてご覧ください。
帳簿の保存ルール
電子帳簿保存法の前に、まずは帳簿の保存について説明します。国税庁のホームページに保存が必要な帳簿書類と期間が載っています。青色申告と白色申告で違いがあるので、それぞれ下表にまとめました。
青色申告の方であれば、仕訳帳、総勘定元帳、確定申告用の損益計算書や貸借対照表も必要です。領収書、請求書、契約書などもありますね。こういった書類をきちんと取っておくというのが、帳簿保存のルールです。
これを守らないと、後々問題が起こることもあります。たとえば、実際に払った経費なのに税務調査で否認される。また、青色申告の承認を取り消される可能性もあります。
こういったことを避けるため、帳簿書類はそれぞれ決まった期間、保管しておく必要があるのです。僕も独立した2017年以降の帳簿はファイリングしています。
これら帳簿書類の保存は、これまでは紙でファイルしておくことが原則でした。しかし電子帳簿保存法により、「データで保存しなければNG」というケースが出てきています。
電子帳簿保存法とは
それでは、具体的なケースにわけて電子帳簿保存法への対応を説明していきます。ここはやや複雑なので順番に理解していきましょう。
もともとが「紙」か「データ」かで大きく異なる
まず、もともとの情報が紙なのか、データでやり取りしているのかに注目してください。紙でもらった書類については、会計システムに入力する方法と、スキャンして保存する方法が認められています。
上記の国税庁の冊子にある図を見ると、「利用したい方が利用する制度」とありますね。つまり紙で受け取った場合には、そのまま紙で保存してもよいという意味です。
電子帳簿保存法が始まったら、すべてをデータ保存しなければいけないと思った方もいるかもしれませんね。でも紙で受け取ったものについては紙保存でも大丈夫です。少しややこしいところかなと思います。
気を付けなければいけないのは、次のポイントです。「電子データでやり取りした取引情報」はデータで保存しなければいけません。印刷して紙で保存することは認められないのです。
最近は紙よりも電子データでのやり取りの方が多いのではないでしょうか。僕もそうです。契約書もクラウドサインですし、請求書も通常はメールで送ります。こうした書類は、これまでは印刷してファイルしておけばOKでした。しかし猶予期間後の令和6年1月1日以降は、データ保存が必須になります。
ネット通販の領収書もデータ保存
データでやり取りするものには、Amazonなどネット通販の領収書も含まれます。紙で届くのではなく、データで表示されるためです。出張先の宿をネットで予約した場合も同様ですね。
では、電子帳簿保存法の基本的な考え方をまとめましょう。
- もともと紙のものは紙のままでも、データで保存してもOK
- データでやり取りしたものは必ずデータのままで保存する
データ保存のルール 検索要件とは
次にデータを保存する時のルールについて説明します。実は、データ保存をするときも細かい条件があります。そのひとつが「検索要件」、つまり探せなくてはいけないのです。
ただデータを保存しているだけでは、必要な書類をすぐに探せないですよね。なので検索要件を満たし、税務調査のときなどにすぐわかる状態にしておかなければいけないのです。
なお、検索要件を満たすには、以下3つの条件があります。
- 取引の日付金額・相手方で検索
- 日付や金額で範囲を指定して検索
- 日付・金額・相手方の組み合わせで検索
保存法①規則的なファイル名か索引簿を付ける
さきほどの検索要件を満たす方法として、国税庁が以下2つの例を示しています。
【規則的なファイル名を付ける方法】
「20210131_110000_(株)霞商店.pdf」という例が載っています。これで2021年1月31日に(株)霞商店と11万円の取引をしたことがわかりますね。
【索引簿を付けるという方法】
日付や金額、取引先とかを一覧表に書いて、ファイル名に連番の番号を付けるというものです。正直、これはやや面倒かなと思いました。一覧表と照合しながらファイルに番号を付けるのは、間違いも起こりそうです。
保存法②会計ソフトにデータを紐づける
この他に、会計ソフトにデータを紐づけて保存する方法があります。会計ソフトを使っている方にはお勧めです。freee会計やマネーフォワードなどを使っている方は参考にしてください。
たとえば、Amazonの領収書を会計ソフトに紐づけるとしましょう。まず、注文履歴の画面から領収書を表示させてPDFでダウンロードして保存します。この時、大体でいいので内容がわかるファイル名を付けておくとよいと思います。
これがダウンロードできたら、次に会計ソフトを開きます。僕はfreee会計を使っているのですが、取引を登録する画面の中に「ファイルを添付」というのがありますね。そこからファイルをアップロードします。その後、ファイルの一覧からその取引に該当するものを選んで「添付」を押してください。
この方法で、先ほどの検索要件を満たせます。手順は異なるかもしれませんが、他の会計ソフトでも同様の機能があるはずです。確認してみてください。
このやり方も最初は手間に感じると思います。ただ慣れてしまえば、印刷してファイルするのとあまり時間は変わらいはずです。そして、書類を探すのは楽になると思います。過去の書類をファイルから探すのは、取引が多くなればなるほど大変ですよね。システムに登録しておけば、取引の日付から簡単に検索できるので便利です。
本格的な開始は令和6年1月1日に延期
最後に、この電子帳簿保存法のスケジュールについて。この制度は今年の1月から開始しています。ですが、先ほどお伝えしたように令和5年の12月までは猶予期間となりました。この期間中はこれまで同様、電子データを印刷して紙で保存しても構いません。
ただ税務調査を受けたときには、きちんと提出できることが条件になっています。
今から少しずつはじめて、猶予期間中に慣れておく
猶予はまだ1年半以上ありますが、僕は今から対応をはじめた方がよいと思っています。新しいことに最初から完璧に対応するのは難しいですよね。慣れるまでは作業に時間もかかります。その時からやればいいと思っていたら、スタートに間に合わない可能性もあります。
今なら一部だけデータ保存をしてみてもいいと思います。少しずつ慣れていって、令和6年1月には確実に対応できるよう準備しておきましょう。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
[参考リンク]
・電子取引データの保存方法(国税庁ホームページ)