2023年に入り、経済の先行きがますます不透明になっています。今、自営業者やフリーランスが考えるべきは、“値上げ”です。物価高騰やインボイス制度などによって、値上げが避けて通れなくなっています。そこで今回は、値上げが必要な理由とともに、値上げに対する精神的なブロックを外していきたいと思います。
値上げすべき理由
物価高が止まりません。ニュースでは連日のように値上げについての報道を目にします。おそらくこの記事を読まれている方も、生活費などが上がってきたと実感されていると思います。
40年ぶりの物価上昇
日経新聞の報道によると、2022年12月は東京都区部の物価が40年8カ月ぶりの上昇を見せたそうです。食費や光熱費、住宅ローン金利など、生活に密着したコストがだんだん増えてきています。
アメリカなどの先進国では日本よりも前からインフレが続いていて、政府はインフレを抑えるために政策金利を上げるなどの対策を打っています。ただ、日本はもともとデフレであり、政府は物価上昇を目指していたので、急な金利引き上げなどは行わないと考えられます。ということは、日本の場合はこれからも当面はインフレが続くと見ておいたほうが良いでしょう。
まずは10%の値上げから
そこで考えなくてはいけないのが、値上げなのです。コストが上がっている今、売上げを増やさなければ利益は少なくなります。当然ですよね。この状況を放置していたら、最低限の生活費さえも稼げなくなり、フリーランスを続けられなくなってしまいます。
僕自身、今年から複数の取引先に対して、10%の値上げをお願いしています。これは物価上昇やインボイス制度の影響を踏まえ、まずは10%からと考えました。その結果、今のところ値上げを断られたことはありません。また、以前と同様にお仕事もいただけているので、売上げがアップしています。
ただ、僕の周りのフリーランスの人と話をしていると、値上げをしたくても言い出せない人が少なくありません。その理由を聞くと、メンタルの問題に行き当たります。値上げをすることで、取引が着られるのではないか、信頼関係が崩れるのではないか、という不安があり、言い出せないのです。
僕もその気持ちは理解できます。でも、冷静に考えてみれば、そうした不安は思い込みにすぎません。今回の記事では、そんなメンタルブロックを外していきたいと思います。
ブロック1 値上げの理由が思いつかない
値上げをお願いしたくても、その理由が思いつかないという人は多いと思います。ただ、理由はそれほど重要なことなのでしょうか。
大手企業のケース
最近は大手企業が次々と値上げを発表しています。その理由としてよく挙げられているのが、原材料費の高騰や円安の影響、人材不足です。
マクドナルドの値上げ理由
日本マクドナルドも、昨年から3回にわたり商品の値上げを発表していて、原材料価格、人件費、物流コスト、エネルギーコスト、為替変動を理由に挙げています。このように書かれると、昨今のウクライナ情勢の影響などで値上げをしなくてはならないという事情が分かりますよね。
フリーランスはどうする?
僕のようなフリーランスの仕事をしていると、仕事のコストはさほどかかりません。食材を輸入したり、人を雇ったりしなくてもいいので、マクドナルドのような値上げ理由を挙げるのは難しいでしょう。
でも、現実問題として生活をするには利益を確保しなくてはならず、そのためには値上げが必要です。だから、値上げをすること自体、何らとがめられることではありません。
もし、値上げをせずに我慢し続けたなら、どうなると思いますか? きっと廃業に至り、クライアントに迷惑をかけることになるでしょう。そして、自分の人生にもダメージを負うことになります。
僕の考えとしては、値上げをするときに具体的な理由を示す必要はありません。僕が10%の値上げをお願いしたときも、とくに理由は説明していないのですが、それでも受け入れてもらえています。まずはダメ元でも交渉をしてみることが大事なのです。
ブロック2 値上げを過大評価している
値上げをするということは、クライアントの負担を増やすということです。そのことに遠慮して値上げ交渉ができない人はどう考えるべきでしょうか。
値上げ=クライアントの負担ではない
ひとつ認識しておきたいのは、値上げした金額がそのままクライアントの負担にはならないという点です。なぜなら、僕たちフリーランスが受け取る報酬は、クライアントにとっての経費になるから。
たとえば報酬を1万円値上げしたとして、クライアントの負担は1万円よりも少なくなります。多くの場合、クライアントは法人ですから、法人税などの実効税率は3割ほど。ということは、1万円の値上げに対して、クライアントの負担アップは7000円ほどになります。
資本規模が違う
そもそも、フリーランスのクライアントの多くは大企業であり、大きな資本をもっています。個人で見れば1万円の報酬アップは大きいと感じますが、クライアントにとっては微差の範囲かもしれません。結果は分かりませんが、思い切って値上げ交渉をしたら、「それくらいならぜんぜん大丈夫」という感想を持たれる可能性は高いと思います。
ブロック3 受注が途絶えると思い込む
値上げ交渉に躊躇する最大の理由は、「仕事の受注が減るかも」という不安にあるのではないでしょうか。この点は、発注型の立場で考えてみましょう。
値上げ交渉を受ける立場で考える
僕は受注側と発注側のどちらも経験しています。なので、僕が発注しているフリーランスの方から値上げ交渉を受ける可能性はあります。
そのときに、「値上げ交渉をしてきたから、この人に発注するのはやめよう」とは絶対に思いません。むしろ、「これまで少なかったかな」と申し訳ない気持ちになるでしょう。そして、予算に余裕があれば値上げをOKすると思います。
もちろん、予算の都合で値上げに応じられなければ、そのように伝えます。そのうえで、「これまでの金額で仕事を受けていただけますか?」とお願いする立場になります。もし受けてもらえれば、ありがたく感じるはずです。
値上げ交渉に応じないクライアントは危険
値上げ交渉を言ってきたから取引をやめるというのは、普通は考えれません。もしそのようなクライアントがいたら、むしろフリーランスの方から取引を止めてもいいと思います。世の中にはあなたに仕事をお願いしたい人がいくらでもいますから、より良いクライアントを探しましょう。
フリーランスになって6年ほど経って思うのが、クライアントとの出会いはすごく大事です。同じような仕事をしていても、クライアントとの相性によって、良い結果になることも、そうではないこともあります。
これは、僕自身をうまく活用してくれるクライアントと、そうではないクライアントがいるということです。食材でも、一流シェフが料理すれば1皿1万円になるのに、料理下手な人がつくると100円でも売れませんよね。
値上げをすることは、より良いクライアントと出会うチャンスです。値上げに応じてくれるクライアントは、それ以上の価値を生める自信があるわけですから、そうしたクライアントの仕事を増やしていきたいものです。