確定申告をした後に、税務署から電話がかかってくることがあります。このときに対応を間違えると、加算税や延滞税を払うことになりかねません。今回は、税務署が電話をかけてくる理由や、対応方法を解説します。
税務署は申告書をどうチェックしているか
最初に、提出された申告書がチェックされる手順について簡単にふれておきます。
税務署によっては、何万件という数の申告書が届きます。ですので、まず内容をざっと見て、問題があるかないかを仕分けていきます。これが「審査」というプロセスです。
さらに、審査で問題があったものを、「軽微で明らかな間違いがあるもの」と、「調査が必要なもの」に分けていきます。税務署から電話が来る前に、この審査が必ず行われます。
前者については、できるだけ早めに連絡を取って申告のやり直しを依頼します。たとえば源泉徴収票の給料は300万円なのに、申告書では100万円だったとか。こういったものは簡単に修正できますよね。
一方、後者の場合は、いきなり申告のやり直しを求められることはなく、税務調査の通知が来ます。詳しくはここから説明していきます。
申告期限前の訂正申告ならペナルティなし
確定申告の期間内に申告のやり直しをすることを、「訂正申告」といいます。訂正申告をした場合、加算税や延滞税はかかりません。本来納めるべき税金を払うだけで済みます。つまり、税務署から電話が来たとき、期限内に申告をやり直すことが大切です。
時々、税務職員は「税金を多く取りたいのだろう」と思われることがあります。でも、そのように考えている職員は稀だと思いますそのため、誤りを把握したら、職員はできるだけ早く連絡を取ろうとします。そしてペナルティなしで訂正申告をしてもらうのです。
もっとも、訂正申告ができるのは期限内に限られます。時間の余裕がある場合でなければ、税務職員が訂正申告の案内をしたくても間に合いません。そのため、できるだけ早く申告をすることが大切です。そのうえで、税務署から電話が来たら、すぐに対応するようにしましょう。
期限後の修正には行政指導と税務調査の2パターンがある
では申告のやり直しが期限後になったらどうなるのか。この場合、「行政指導」と「税務調査」の2つのパターンがあります。このどちらかによってペナルティに違いが出てきます。
行政指導なら利息に相当する延滞税だけで済む
まず行政指導から説明します。行政指導は、単純な計算間違いなどがあった場合に行われるものです。この場合、税務署から本人に連絡があり、申告のやり直しを案内されます。
ここでのポイントは、行政指導は自主的な申告の修正依頼という点です。この修正に応じれば加算税はかかりません。ただし、期限後に納税する税額については、延滞税がかかります。
税務調査に移行すると、過少申告加算税も発生する
行政指導のために税務署から電話があっても、どうしても本人と連絡がつかない場合があります。このような場合、税務調査に移行する可能性があります。また軽微な間違いではなく、内容の詳細な確認が必要なときも、やはり税務調査が行われます。
こういったケースでは、銀行や取引先を調べる「税務調査」に移行する可能性があります。そして、税務調査後に修正申告をすると、延滞税とともに過少申告加算税がかかってしまうのです。
税務署の連絡を受けてすぐに対応していれば、行政指導で済むかもしれません。それが税務調査に移行してしまうと、支払う税金が増えてしまいます。申告期限の前後にかかわらず、税務署からの連絡にはとにかく早く対応した方がよいことは間違いありません。
連絡が取れずに数百万円の税金が発生した事例
これは僕が税務職員で贈与税の担当をしていた頃のエピソードです。税務署からの電話を無視したばかりに、数百万円の余計な税金がかかってしまった方がいました。
贈与税は財産をもらったときにかかる税金です。この税率は高くて、最高で55%にもなります。ただし、贈与税には特例があり、これを使えば税金を抑られることが可能です。この特例のなかに、「住宅取得資金贈与の特例」があります。父母や祖父母から住宅取得目的でもらったお金は、一定の範囲内で非課税になるという制度です。
あるとき、贈与税の申告内容に不備があるため、本人に連絡を取ろうとしました。その申告が、住宅取得資金贈与の特例を使う内容の申告書でした。
ところが何度かけてもつながらず。留守電を残しても折り返しをもらえませんでした。最後には郵便も送りましたが、それでも連絡がとれなかったのです。結果、その方は贈与税の特例を使えなくなってしまいました。
しかも、贈与があったという事実は変わりません。すると、特例を使わずに税金を計算することになります。結果、その人の税金は数百万円もアップしてしまいました。特例をきちんと使っていれば税金がゼロだったのに。
税務署からの電話は、とにかく早く対応を
税務署からの電話は、何を言われるのだろうと思ってドキッとしますよね。なんとなく対応を後回しにしてしまいたくなるかもしれません。
ですが基本的に申告や手続きの不備を伝えるための連絡です。間違いがあったなら、早く修正した方が追徴税もなくて済みます。だから早く対応した方がよいと思います。
そういった意味では、毎年の確定申告もできるだけ早めにしておいた方がよいでしょう。そうすれば訂正申告で済み、加算税や延滞税を防げます。正しく申告するのが一番ですが、万が一の誤りに備えて早めの対応を心がけましょう。
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