確定申告期限が延長されると、国税庁から発表がありました。昨年の延長措置と違って、今回は一律の延長ではありません。どういう人が対象で、いつまでに提出するのか。また手続きはどうすればよいのか。この辺りについて国税庁の発表を見ながら解説していきます。
こちらの内容はYouTube動画でも説明しています。よろしければあわせてご覧ください。
3月中に期限が来る申告が延長
所得税と贈与税の確定申告期限は3月15日、消費税は3月31日です。これらの申告期限の延長について国税庁から発表がありました。
ご記憶の人もいると思いますが、昨年もコロナの影響で申告期限が3月15日から1ヶ月延びました。今回気を付けなければいけないのは、昨年とは条件が違う点です。
昨年の確定申告は、一律で1ヶ月間期限が延長されました。そのため、コロナの直接的な影響がなくとも延長可能でした。ですから、ただ忙しくて間に合わないから4月15日までに出した、というケースもあったと思います。
しかし今回は、実際に影響を受けた場合のみ延期が認められます。また、延期される期限も基本的には4月15日までとしながら、個別の事情に応じてそれ以降でも認められることになっています。
延期対象に認められる「コロナの影響」とは
今回の延長措置の理由である「コロナの影響」とはどのようなことなのでしょうか。国税庁のFAQを参照しながら、具体的なポイントを見ていきましょう。
通常、申告期限の延長が認められるのは、台風などの災害で帳簿の滅失など直接的な影があった場合です。ところが今回はそういったことがなくても、延期の対象になります。たとえば「濃厚接触者になって外出できない」といった理由です。
判断のポイントは「自己の責めに帰さない理由」です。期限を延長するには、自分の責任ではない理由が求められます。昨年のように、ただ忙しいという理由は認められません。実際にコロナの影響があったという事実が必要になるのです
国税庁のFAQには、具体的な理由がいろいろと挙げられています。たとえば次のような理由です。
- 自分自身がコロナに感染した
- 感染の疑いが生じた
- 基礎疾患があって感染すると重症化の恐れがある
- 顧問税理士などが感染した
- 顧問税理士などが外国から戻ってこられない
これらの例を見て分かるように、不可抗力な事情があるかが問われます。確定申告の作業を進めようにも、コロナの影響で進められないという状況ですね。そういった事情があれば、延長措置が認められるでしょう。
コロナの影響がないのに期限に遅れると?
国税庁のFAQに、期限に遅れる理由を税務署が聞く場合があるとも書かれています。そのため、本当は申告できたはずなのにコロナの影響があると偽って申告期限を遅らせた場合は、税務調査が入るかもしれません。
もしも税務調査の結果、コロナの影響がなかったと判断されたとしましょう。すると、申告期限から遅れたことになります。この場合、無申告加算税や延滞税がかかります。さらに悪質なケースは、重加算税を問われることもあるので、注意してください。
申告期限の延長手続き
確定申告の期限を延長する場合、2パターンの手続きに分かれます。具体的には4月15日までに申告する場合、とさらに延長したい場合です。それぞれ見ていきましょう。
4月15日までの申告は簡易な手続き
コロナの影響があり、4月15日までに申告できる場合です。この場合、事前の手続きはありません。確定申告書に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と書くだけです。記載例の通りに、申告書の右上の余白にこの一文を記入してください。
e-Taxの場合は、「送信準備」画面の「特記事項」欄にこの一文を入力しましょう。
これで4月15日までに申告書を提出すれば、期限内申告として取り扱われます。
4月15日に間に合わない場合は延長申請
次に、4月15日までに間に合わなくなってしまったケースです。
この場合、申告できない事情がおさまった日から2か月以内の範囲で個別指定による期限延長が認められます。ただし、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を税務署に提出することが条件です。
「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の記入内容を見ておきましょう。記入例が国税庁のホームページ載っていました。これも概要欄にリンクを張っておきます。
もともと災害を想定した書面ですので、「被害を受けましたので」とありますね。ここを「新型コロナウイルスの影響により」と修正するように書かれています。そして延長申請が必要な理由は「被災状況」欄に記入してください。ここをきちんと書いておけば基本的には承認されると思います。
いずれにしても確定申告は必要。早めの対応を
ということで今回はコロナに伴う確定申告期限の延長について説明しました。延長措置があるのは安心ですが、一律延長ではないので注意が必要です。
それを知らずに3月15日を過ぎてしまうと、税務署からはコロナの影響があると偽って延長申請したと判断されるかもしれません。税務調査の可能性もあります。さらには、今後の事業復活支援金の申請にも影響が及ぶかもしれません。
いずれにしても確定申告は必要です。今時点でとくにコロナの影響のない方は、早めに申告を済ませた方がよいでしょう。そして万が一の場合にはこの記事も参考に、延長申請を進めていただければと思います。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
[参考リンク]
・確定申告期限延期についての国税庁発表(国税庁ホームページ)