ふるさと納税は最強の節税方法です。やり方さえ間違えなければ、確実に得することができます。今回は、上限金額や寄付する人の名義の問題など、いくつかの注意とともに、正しい手続きを解説します。
動画でもお話ししています。
ふるさと納税はお金が残る節税策
ふるさと納税の仕組みは、地方自治体に寄付金を払うと返礼品がもらえて、節税効果も生じるというものです。
僕の著書『節税の全ワザ』でいろいろな節税策を紹介していますが、本当にお金が残る節税方法には限りがあります。たとえばパソコンを経費で買えば節税につながりますが、節税効果以上に出ていくお金の方が多いのです。
でも、ふるさと納税は、正しくやれば支払ったお金以上のものが戻ってきます。このように損をしない節税方法は、ふるさと納税以外ではiDeCoや青色申告、小規模企業共済くらいしかありません。これらの節税方法の中でも、ふるさと納税は一番使い勝手が良いです。
ふるさと納税、3つのキーワード
ふるさと納税のキーワードを3つ挙げます。「地方自治体に寄付」。次に「寄付金の3割に相当する返礼品」。最後は「自己負担2,000円」です。
地方自治体に寄付
ふるさと納税を利用するには、まずは地方自治体に寄付をする必要があります。寄付をすると受領書がもらえるので、これで確定申告をすると所得税と住民税が控除されるのが基本です。
お得度を確認する公式
ふるさと納税を行うと、自己負担が最低2000円生じます。ただし、この自己負担以上の価値のある返礼品がもらえます。この返礼品は、総務省のルールによって寄付額の3割相当のものとなっています。
つまり、以下の計算式でふるさと納税のお得度を計算できます。
返礼品のお得度=寄付額×3割-2,000円
では、10万円を寄付した場合でシミュレーションしてみましょう。節税効果は、10万円から自己負担の2,000円を引いた9万8,000円です。寄付額10万円に対して受け取る返礼品は、10万円×3割=3万円ぐらいの価値と見込まれます。ということは、「2,000円で3万円のものを手に入れた」ということですから、ものすごくお得ですよね。
上限額は所得金額と家族構成で異なる
ふるさと納税は、多くの寄付をした方が得なのですが、上限額に注意が必要です。この上限額は一律で決まっているわけではなく、所得金額や家族構成によって変動します。
イメージをつかむために総務省が作成した試算表を見てみましょう。給与収入が300万円の場合、独身なら2万8,000円まで寄付ができます。ところが夫婦と大学生、高校生の子供2人の場合ではゼロ。つまりふるさと納税をしても節税できない、ということになります。
この表からわかるように、収入が増えるほど上限額は増え、家族が増えるほど上限額は減るということを理解してください。
ポータルサイトで上限額シミュレーション
ふるさと納税の上限額は、自分だけで計算するのは大変です。そこで、ふるさと納税のポータルサイトにあるシミュレーションが使えます。
ただし、多くのサイトは源泉徴収票の金額を入力する形になっており、給与収入の人が対象となっています。フリーランスは、所得の計算方法がサラリーマンとは全然違うので、このようなシミュレーションは使えません。
そこでフリーランスの人に勧めたいのが、ポータルサイト「さとふる」の詳細シミュレーション機能です。
さとふるのページの中ほどに、控除上限額シミュレーションというメニューがあります。右側の「詳細はこちら」を押してください。そこから「より正確な金額がわかる!詳細シミュレーション」に進みます。すると、給与収入の人と個人事業主の人でわかれています。フリーランスの方は「個人事業主・副業のある方」を選びましょう。
所得や控除額は前年の確定申告書を参考に
ここで入力する所得金額は、1月1日から12月31日の合計額を予想して入れます。これは帳簿を見ながら考えるといいでしょう。
次に、「所得から差し引かれる金額」の欄には、生命保険料控除とか社会保険料控除、基礎控除などの控除の合計額を入れます。その時点で額がわからなければ、前年の確定申告書の控えが参考になるでしょう。
そして、「住宅借入金等特別控除」の欄もあります。住宅ローン控除もこの計算に影響してくるので、該当する方は忘れずに入れてください。控除額は年末時点のローン残高に応じて変わりますが、前年の額でも計算に大きな差はでないと思います。
念のためですが、このシミュレーションはあくまで目安です。このページに記載があるように、より正確な計算方法や金額を知りたい場合は、税理士さんなどに相談してください。
ふるさと納税の手順
ここから、実際にふるさと納税を行う手順を説明していきます。
ポイントがつくポータルサイトを選ぶ
寄付をするときは、ふるさと納税のポータルサイトを使うことをお勧めします。各自治体のホームページから直接寄付することもできますが、ポータルサイトなら一度に複数の自治体への寄付ができるので便利です。
次に、数あるポータルサイトからどこを選ぶわけですが、ポイントに注目して選ぶようにしましょう。
僕は例年、楽天のサイトからふるさと納税をして、楽天ポイントをゲットしています。これだけで自己負担の2,000円を超えるポイントになります。
今年はさとふるが2022年11月末まで寄付金額の最大20%のPayPayポイントがつくキャンペーンをやっていますので、こちらを利用しました。初めての方やアプリでの寄付という条件がありますが、魅力的ですよね。
どのポータルサイトでも、全国の自治体に寄付ができます。いろいろなサイトでポイントの有無を確認してみましょう。
寄付先は人気ランキングが参考になる
ポータルサイトを決めたら、次は寄付先を選びます。寄付先はひとつだけでなく、複数選べます。
寄付したいと思う特定の自治体がない場合は、人気ランキングが参考になります。寄付先はものすごく多いので、決めるのは結構大変です。ランキング上位には、お得な返礼品がきていると思わるので、上位から選べばお得度が高い寄付ができるのではないでしょうか。
家計の節約なら日用品を選ぶ
家計の節約を考えるなら、返礼品は石鹸やティッシュなどの日用品を選ぶといいと思います。高級なお肉などを楽しむのもいいですが、家計が楽になるわけではありません。普段使うものをふるさと納税で手に入れれば、家計の節約になります。
食品を選んだときに困るのは、返礼品の量が多いケースがあることです。寄付額が1万円だと、その3割で3,000円分のお肉が届くわけです。それが一度に届いて、冷凍庫に入りきらなかったという話も聞きます。そうなると、毎日同じものを食べたり、腐らせたりといったことにもなりかねません。その意味でも、腐る心配がない日用品はおすすめです。
ふるさと納税を受けるための申告手続き
次にふるさと納税の申告手続きです。これには、確定申告とワンストップ特例という2つの方法があります。
確定申告
確定申告の場合は、申告書の寄付金控除の欄に記入します。寄付先の自治体から届く納税の受領書も忘れずに提出しましょう。
確定申告を行うと、まず税務署で所得税が控除されます。そこから市区町村に申告情報が共有されて住民税も控除される仕組みです。通常の確定申告の流れと同じですね。
ワンストップ特例
確定申告の必要がなければ、ワンストップ特例の申請ができます。ふるさと納税をする時に申請するのですが、方法はとても簡単です。
ポータルサイトに、ワンストップ特例を申請するチェックボックスがあります。そこにチェックを入れておけば、自治体から申請書類が届きます。それに記入して身分証明書のコピーなど必要な書類と共に返送するだけです。そうすれば納税先の自治体からお住まいの自治体に情報が共有されて、住民税が減額されます。
なお、確定申告の場合は所得税と住民税が減額されますが、こちらは住民税だけです。ただし節税効果は同じですので安心してください。
ちなみにワンストップ特例は、確定申告の必要がない給与所得者のみを対象としています。フリーランスやそのほか確定申告が必要な方は、ワンストップ特例ではなく確定申告でふるさと納税の手続きをしてください。
ワンストップ特例の寄付先は5つまで
ワンストップ特例でひとつ注意点があります。寄付できる自治体が5つまでという制限があるのです。だから6つ以上の自治体に寄付したいのであれば、確定申告をしなければいけません。
あと、ワンストップ特例を申請していたけれど、後から確定申告が必要になった場合も要注意。その場合は確定申告の時にふるさと納税の手続きをしてください。
確定申告では、後から申告した情報だけが残ります。元の情報はすべて上書きされてしまうのです。特例申請が終わっていても、後から提出する申告書に寄付金控除の記入がないと、ふるさと納税は使わない申告内容になります。すると、ふるさと納税の効果が一切なくなってしまいます。確定申告をする際には、寄付金控除の欄に忘れずに記入してください。
きちんと手続きができたかをチェック
最後の確認として、毎年6月頃に届く住民税の通知書もチェックしましょう。もし控除欄が空欄であれば、ふるさと納税が反映されていないということです。そのような場合は、寄附金控除を追加するために更正の請求という手続きができます。
ふるさと納税の失敗例
ここからはふるさと納税の注意点についてお伝えしていきます。5つの失敗パターンがあるので、覚えておきましょう。
注意①節税効果を得るまでの時間
ふるさと納税の節税効果を得るまでには、時間がかかります。たとえば2022年に寄付した場合。所得税の減税が発生するのが2023年の3月頃です。さらに住民税の減額は同じく6月以降。もし1月に寄付していたら、1年以上、支払ったままマイナスの状態が続くことになります。
その意味で、できれば年末頃にふるさと納税を行ったほうが、資金繰りは安定します。
注意②上限額を超えて寄付すると損
次のポイントは、ふるさと納税の上限額です。上限額以内であれば、ふるさと納税の自己負担額は2,000円。しかし上限を超えて寄付をしてしまうと、超過分は全額自己負担になってしまいます。
この計算は少しややこしいので簡略化して説明します。たとえば寄付の上限額が4万円の人が10万円の寄付をしてしまったら、差額の6万円は全額自己負担です。まったく節税効果がありません。
さらに節税効果が及ぶ4万円分の寄付について、自己負担の2,000円はかかります。つまり、合計6万2000円の負担です。受け取る返礼品は、寄付額の3割ぐらいですから10万円×3割で3万円。そのために6万2,000円を払っているのですから、明らかに損をしています。
上限額を気にせずにふるさと納税をしてしまうと、かえってお金がなくなります。あらかじめ上限額を確認しておきましょう。とくに我々フリーランスは、会社員のように収入の先読みがしづらいので、少し低めに見積もっておいた方が安心です。
注意③対象外の自治体がある
ほとんどの自治体がふるさと納税の対象ですが、いくつか対象外の自治体もあります。各自治体は総務省に申請し、許可を受けてこの制度の対象になっています。ですが、申請をしていなかったり、取り消されたりした自治体もあるのです。
2022年10月1日から翌年9月30日までの対象地域が、2022年9月22日付けで総務省から発表されています。対象外は、東京都、兵庫県洲本市、宮崎県都農町です。東京都はもともとふるさと納税に反対しているので、ずっと使えないままです。
このような対象外の自治体は毎年変わります。特定の自治体に寄付したい場合は、あらかじめ総務省のホームページなどで確認しておきましょう。
また、自分が住民票をおいている自治体はそもそも対象外です。そこに寄付をしても節税効果は一切なく、純粋な寄付という形になるので注意してください。
注意④寄付は控除を受ける人の名義で行う
ふるさと納税を行うときの名義にも注意が必要です。所得税や住民税の控除を受ける人の名義で寄付をしないといけません。
たとえば夫が会社員、妻が専業主婦で収入がないケースでは、妻の寄付の上限はゼロ。それなのに妻の名義で寄付をしてしまうと、ふるさと納税にはなりません。単なる寄付になってしまいます。1万円を寄付して3,000円の返礼品をもらう。7,000円の損です。
税金の手続きは、自治体から届くふるさと納税の証明書に記載の名義で判定されます。後から、「これは夫のふるさと納税のつもりだった」と主張しても通用しません。とにかく名義は間違えないように注意してください。
注意⑤年内に決済を終える
次の問題が決済のタイミングです。ふるさと納税の期間は毎年1月1日から12月31日までになっています。その年のうちにお金を払わないといけません。
決済方法にはいろいろあります。クレジットカード払いなら、基本的に即日決済なので大丈夫だと思います。問題は、振込やコンビニ払いにした場合です。12月31日に申し込んで、コンビニでの支払いが翌日の1月1日になったとか。そうなると申し込んだ年ではなく、その翌年、支払った年のふるさと納税になってしまいます。
お伝えしたように、ふるさと納税の節税効果が得られるのは翌年です。2022年12月31日までに決済していれば、2023年中に節税効果を得られます。しかし決済が2023年1月1日だと、その節税効果は2024年になってしまいます。
お金が出ていっている状態が1年以上になるのは良くないですよね。できるだけ家計を安定させるためにも、必ず年内に決済するようにしましょう。
まとめ。ブックマークで見直しを
今回はふるさと納税に関して僕が持っている知識を全てお伝えしました。ぜひブックマークして、必要な時に見直していただければと思います。ふるさと納税はすごくお得な制度ですが、いくつか注意点があります。間違いのないよう、よく確認してうまく活用していきましょう。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください
【参考リンク】
・全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安(総務省ホームページ)
・ふるさと納税の控除上限額(限度額)がわかるシミュレーション&早見表(さとふるホームページ)
・ふるさと納税指定制度に係る総務大臣の指定(総務省ホームページ)