スマホのアプリを触っていたら、いつの間にか時間を奪われている。僕も含めて、そういう方も多いのではないでしょうか。実は、時間だけでなく集中力も奪われていて、生産性が落ちているというのです。今回はこの問題の解決に役立つ本を紹介します。
YouTubeでもお話ししています。
ヨハン・ハリ著『Stolen Focus』の要約
今回取り上げる洋書は、ヨハン・ハリ著『Stolen Focus』です。タイトルを直訳すると「盗まれた集中力」。サブタイトルは「Why You Can’t Pay Attention–and How to Think Deeply Again」。どうしてあなたは集中できないのか。そしてどうすれば再び深く考えられるのか、というものです。
オンラインが長いほど集中力は失われる
SNSやネットニュースに多くの時間を奪われているーーある日、ヨハンさんはそのことに気付きました。それで3年以上かけて世界的な調査をしたのです。
すると、どこでも同じような状況になっていました。また、世界中で同時に人々の集中力が落ちる問題が起こっているとわかったそうです。また、オンラインで過ごす時間が長いほど、集中力は失われてしまう。こういった研究も本書で紹介されていました。
僕自身、最近集中力が途切れることがあると感じます。フリーランスなので、誰も見ていない環境で仕事をしていますから、ついSNSを見てしまったり。そのせいで、仕事時間が伸びているので、これはなんとか改善したいです。
脳で処理できる限界を超えた情報量
人の集中力が失われていることの裏付けとして、出版界のトレンドが示されています。健康関連の書籍が人気になることもあれば、経営のビジネス書が流行る時期もありますよね。そのようなトレンドのサイクルが、どんどん短くなってきているそうです。つまり、人々が飽きっぽくなっている。
流行の移り変わりが早いと、「取り入れなければ」と思う情報が次々に出てきます。今はこれがトレンドだから知っておかないと、という気持ちになりますよね。最近はテクノロジーも発達しているので、SNSも次々に登場します。FacebookやTwitterが使えるようになったと思ったら、もう次のTikTokが出ていたり。
新しいことがどんどん出てくるので、処理する情報は増えるばかりです。一方、人間の脳の処理能力は4万年前からほとんど変わっていません。だから今の情報過多の状況では、もう脳は処理しきれなくなっています。集中しようと思っても、簡単にはいきません。
アプリを使いすぎる危険性
本書がとくに危険視していたのは、スマホのアプリです。普段当たり前のように使っているアプリが、あなたの人生に悪影響をおよぼしているかもしれません。
なぜスマホアプリから目を離せないのか
僕はライターとして、アプリの開発をしている会社に取材に行くことがあります。そこで感じるのは、開発者はとにかく多く使ってもらえるように工夫を凝らしているということです。
まずはインストールしてもらう。そして定期的にログインして、チェックしてもらう。さらには長く滞在してもらう。そのために通知機能をたくさん付けたりとか、画面を見やすくしたりしています。使い勝手を良くしようという努力でもありますが、ある意味中毒にさせようとしているともいえます。
FacebookやTwitterの「いいね」もそうですよね。これがあるから、なんとなくチェックしたくなりませんか。自分の投稿に「いいね」が付いているか、つい見たくなってしまいます。
開発者も後悔。無限スクロール機能の影響
僕たちを中毒化させる機能の最たるものが「無限スクロール」です。FacebookとかInstagramをお使いの方は、馴染みがあると思います。スクロールしていけば情報が更新されて無限に出てきますよね。
これを開発したアザ・ラスキンさんという方は、開発したことを後悔しているそうです。この機能によって、人々がアプリに費やす時間が50%も伸びたといいます。アプリの運営側としては喜ばしい状況ですが、人間に対する影響はよくないものがある。開発した人もそう思っているようです。
一番貴重なリソース、時間が奪われている
今、オンラインプラットフォームは数多くありますよね。そこに費やす時間が、ものすごく増えていると思いませんか。
僕は今41歳です。20年前、20代の頃はまだスマホもありませんでした。だからずっとネットを見ているようなことはなかった。何をしていたかはよく覚えていませんが、おそらく読書や勉強をしていたと思います。そういった時間がオンラインによって奪われている。これも本書で提起している大きな問題です。
実はマルチタスクの生産性は低い
いまは、通知があればすぐにメールやアプリをチェックできます。また仕事中でも、ついネットニュースを見てしまうこともあると思います。こういったマルチタスク状態は一見効率的ですが、実は違います。
マルチタスクが実は非効率な理由
2つ以上のことを同時に進めていくマルチタスク。これはかつては、仕事ができる人のやり方と考えられてきました。でも実は、そもそもマルチタスクの生産性は高くないという研究結果が出ています。なぜなら、マルチタスクでは同時に複数のことをしているのでなく、ひとつずつ切り替えて順番におこなっているからです。
AとBという2つのタスクがあったら、AからB、BからAとつど切り替えている。この切り替えの時に脳への負荷と時間がかかるのだそうです。これを避けるには、AとBを順番にやる。Aを終わらせてからB、もしくはBを先にやってからAに取り組んだ方がいいのです。
また本書では、シングルタスクとマルチタスクで仕事をした後のIQの比較もしていました。すると、マルチタスクのグループの方が、IQが10ポイントほど落ちていた。やはりシングルタスクの方がよいのです。
こういった状況にもかかわらず、アメリカでは平均的なホワイトワーカーは、1日のうち約40%をマルチタスクに費やしている。これはもったいないですよね。マルチタスクはやめて一つの事に集中する。シングルタスクにすれば同じ分の仕事も短時間ですむし、脳への負荷も減るでしょう。
フロー状態を意識的に作りだす
さらに本書では、シングルタスクの中でもフロー状態になることを勧めています。超集中状態のことですね。目の前のやるべきことに集中しきっていて、他のことはもう全然目に入らない。周囲のことは何も気にならない、聞こえないというような状態です。これはチクセントミハイという方が提唱したもので、『Flow』という本も出ています。
試合中のオリンピック選手はフロー状態であると聞いたことがあるかもしれません。トップアスリートのように自分がなれるとは思い難いですが、ヨハンさんは「誰でもフロー状態になれる」と説いています。そうであれば、意識的にその状態を作りだしたいですよね。
雑音(スマホ)を遠ざける
フロー状態を作るためには、まず余計な雑音を遠ざけること。スマホの通知をオフにしたり、別の部屋に置いたりするといいと思います。僕も執筆をする時は、できるだけインターネットをオフにするようにしています。
また、iPhoneのスクリーンタイム機能も使っています。これは特定のアプリの使用時間を1日何分までにする、という設定ができる機能です。つい頻繁に見てしまうアプリは、1日30分しか見られないように設定してしまうとか。そういうことを取り入れるのもおすすめです。
短時間にして、タスクのハードルをあえて上げる
また、実は「大変そうなタスク」ほどフロー状態になりやすいそうです。事例として、スウェーデンにあるトヨタの工場が挙げられていました。その工場では、労働時間を1日2時間短くしたそうです。その結果、なんと生産性が上がって利益が25%もアップ。短時間で終えなければいけないという挑戦が、働く人の集中力を高めたおかげです。
この話を読んで、僕も仕事の時間を短くすることにしました。いままで執筆にかけていたのは8時間です。それを6時間に短縮しています。これで生産性が上がるか、もしくは仕事が間に合わなくなるか。実験をしているところです。
時間と集中力を奪われないよう、スマホと付き合う
いまインターネットやスマホは必須のもので、完全に断つのは難しいですよね。だから使い方に気を付けるしかありません。でないと、一番貴重なリソースである時間や、集中力が奪われてしまいます。
誰もが日々忙しくて、時間が余っているという人は少ないのではないでしょうか。自分の貴重な時間を、人生の目標のために使うか、オンラインに時間を奪われるのか。前者の方がいいですよね。そのために、まずはスマホをつかう時間を減らしてみてはいかがでしょうか。
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※本記事は執筆時点の情報に基づき掲載しています。制度のルールなどが変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください
【今回紹介した本】
「Stolen Focus: Why You Can’t Pay Attention–and How to Think Deeply Again」